元祖鉄道アイドル、今は「鉄旅タレント」として鉄道をアツく語る木村裕子が日本各地の魅力的な路線を紹介する“女子鉄ひとりたび”。今回は東北屈指の観光路線「JR五能線」をレポート!。(『女子鉄ひとりたび』著 木村裕子 より)

■“キムランキング”で上位に入るハズせない路線

「鉄道初心者におすすめの路線は?」と聞かれたとき、即答するのはJR東日本の五能(ごのう)線。ここは青森県の川部(かわべ)駅と、秋田県の東能代(ひがしのしろ)駅を結ぶ長大なローカル線だ。一時は廃止を危ぶまれた時期もあったが、1997年4月に運転を開始した観光列車「リゾートしらかみ」が大ヒット! 今では東北地方屈指の観光路線として人気を集めている。車窓風景は実に多彩で、日本海の大パノラマも心ゆくまで車内から堪能することができる。観光列車が温泉・絶景・グルメ・観光へとコンシェルジュのように誘い、絶対にハズさない路線だからだ。

 私自身も五能線はとても好きな路線で、〝キムランキング〞上位に入るハズせない路線。鉄旅タレントという仕事柄、五能線を訪れる機会には恵まれてきた。毎回新たな発見があり、楽しい出会いもあった。五能線沿線は観光的な見どころも多いが、心して訪れないといつも素通りになってしまう。このときは、「観光もしっかり楽しもう」と心に期しての乗り鉄となった。

 五能線の普通列車にはキハ40系という、国鉄時代に製造された古いディーゼルカーが使用されている。いつも思うが、冬のローカル線にはディーゼルカーがよく似合う。列車から雪の中で背中を丸め歩く人たちを見て、頭の中で石川さゆりさんの名曲『津軽海峡・冬景色』が3回ほどリピート再生されたころ、五所川原(ごしょがわら)駅に着いた。ここで見たかったのは立佞武多(たちねぷた)の展示施設。佞武多は夏の青森を彩る季節の風物詩だ。青森と弘前で行われる「ねぶた」と「ねぷた」が有名だが、五所川原の立佞武多も「はねと」(跳人=佞武多の踊り手のこと)の熱気では負けていない。

 五所川原の市街地中心部は立佞武多開催に備えて、電線の地中化が進められているので、見た目にもすっきりしている。地元の若者に交じって名物の「あげたいやき」をほおばると、小腹も満たされ気分はほっこりだ。全国でも有数のりんごの産地として知られる津軽地方は、店頭での販売価格も1個50円くらいと驚くほど安い。思わず買いたくなるが、旅の荷物は1グラムでも軽くしたい私にとって、ずっとりんごを抱えての旅は結構つらい。残念だけどまたの機会にするとしようか。

 五能線の鰺ヶ沢(あじがさわ)から東八森の間は、海沿いの区間が連続。全国の鉄道路線でもこれだけ長い間、海を堪能できる路線は珍しい。千畳敷(せんじょうじき)駅で途中下車。この駅では、隣接した岩の斜面に湧水が氷結していて、連なる巨大なツララが旅人を迎えてくれる。湧水とはいっても、その規模は大きく、遠目には巨大な滝のように見えてなんともダイナミック。全国にはさまざまなロケーションの駅があるが、ここまで神秘的で荘厳な表情を見せる駅も珍しい

 この駅はかつて、観光客誘致を目的に設置された仮乗降場だったが、JR東日本発足時に臨時駅に、そしてその半年後に正式な駅に昇格、短期間にとんとん拍子に出世したエリート駅なのだ。私もあやかりたいものだ。千畳敷は江戸時代に地震で隆起した地形で、海の中に浮かび上がった巨大なお座敷を思わせることからこの名前がついたとのこと。こちらも五能線沿線を代表する観光スポットだ。