総理大臣の「辞め時」とは、いつなのか? 

田原・・・もっと言うとね、昔の自民党は総理大臣が辞める、代わる時は野党との喧嘩に負けた時だった。それは岸信介にしても田中角栄にしても、そして、福田赳夫しかり、竹下登、宮澤喜一も、どれも反主流派との抗争に負けている。今は反主流派はいなくて、全部安倍のイエスマン。

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望月・・・残念ながら。

田原・・・モリカケ問題で、国民の70%以上が安倍政権はダメだと思った。ところが自民党の幹部や中堅政治家たちが、安倍さんに問題があると誰も言えない。今度の「桜を見る会」の件だってそうだ。(冒頭でも話した通り)改造直後に閣僚が2人も辞めて不審が相次げば、ポスト安倍がしっかり待機しているというのが自民党だったんだよ。

望月・・・自浄能力が完全になくなってしまいましたよね。

田原・・・何でこうなってしまったのか。

望月・・・総裁選後の石破派の冷遇の話が、本当にすごいらしいのです。この間も、憲法審査会で挙手しているのに指されなかった石破議員が激怒したと報じられました。1時間で15人が発言する中で、最後まで指名されなかったと。本来、自民党の改憲は石破さん的な主張が主流だったはずなのに、いつの間に変質してしまったのか。憲法改正をまともに議論しようとしていないのは、野党ではなく、安倍自民党ではないかと思います。

田原・・・本当ならば石破茂元地方創生担当相なんかを閣内に置いておいた方が政権運営、党運営としては安定する。石破さんを完全に孤立させてしまった。こういうことをしていたら昔はすぐに足元をすくわれるリスクがあった。僕は石破さんに言ったんだ。「石破さんがいないと、自民党は独裁だよ」と。 そういう情けない自民党をどう思う? 

望月・・・内閣人事局制度しかり、党人事しかり、権力が官邸に集中しているからでしょうね。

田原・・・内閣人事局を作って政治家主導をやろうとしたのは安倍さんではなくて、小沢一郎。古くは国会法改正を言い出して権力の掌握を試み、そして民主党政権の時に、官僚機構の政治主導を謳った。国民のために働く官僚を、政治がハンドリングすべきとして支持された。日本は、政治が停滞しても、優秀な官僚がいて国は機能していたから、その力を政治に使おうと小沢一郎は考えた。そうして、官僚主導から政治主導に切り替えなくてはいけないと。
 安倍さんは、その小沢案を引き継いだ内閣人事を始めたわけだ。これは民主党が行った一つの改革だった。国民はこれに異を唱えるべきだったのか。官僚主導に戻すべきなのかな……。

●政治家主導と官邸主導、どちらが上手く行くのか?

望月・・・政治家が今の政権のような人たちでなければ、違ったのかもしれません。

田原・・・小沢が官僚主導から政治主導にすると言ったとき、東京新聞は反対だった?

望月・・・当時は、メディア全体が、官僚バッシングをしていた気がします。

田原・・・東京新聞は官僚を抑え込む小沢改革に賛成していたはずだ。

望月・・・当時の論調を考えると、私も賛成していたかもしれません。私は内閣人事局を廃止すべきとは思っていません。ただ、そこに、現在起きているような政治の暴走を許さないための手続き、歯止めとなるものがあった方がいいと思います。
 課長級も含めてあらゆる人事を官邸主導にすることは結果的に、政治の暴走や私物化を許してしまうと思います。人事手続きの情報開示が必要です。誰が、どのような理由で人事を行ったかをしっかり開示すれば、政治の暴走、または霞が関の懐柔工作などは抑えられると思います。
 モリカケ問題の教訓として、メモ・議事録の開示は行政監視に欠かせないと思いますね。

田原・・・政権を取ったはいいが、内閣として思うような仕事が出来なかったというのが政治の痛いところだった。為政者にとって最大の抵抗勢力は官僚。彼らは頭もいいし、制度も熟知している。為政者が改革をしようとすれば、この法律とこの法律の改正が必要になりますよ、といった具合に様々なハードルを仕掛けてくる。霞が関は行政の専門家集団だから、ポッと出て1~2年で変わる首相など、簡単に懐柔出来たわけだ。それで結局、政権奪取したのはいいが、何もできないまま短期間で首相は変わるという辛酸をなめてきた政治だった。
 その官僚人事をついに掌握した安倍さんは、良し悪しはともかく、やろうと思ったことはどんどんやっている。特定秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪……。これは望月さんから見れば、酷いことばかりしている……となるのだろうね。

望月・・・私は、この政治は何がしたいのかと考えてしまうのです。見ていて怖いです。

 

田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。 1960年早稲田大学卒業後、岩波映画製作所、東京12チャンネル(現テレビ東京)を経て、1977年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』などの番組でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。 1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学で、「大隈塾」を開講。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。 著書多数、近著は『殺されても聞く』(朝日新書)。
望月衣塑子(もちづき・いそこ)
1975年、東京都出身。慶應義塾大学法学部卒。東京新聞記者。千葉、埼玉など各県警担当、東京地検特捜部担当を歴任。2004年、日本歯科医師連盟のヤミ献金疑惑の一連の事実をスクープし自民党と医療業界の利権構造を暴く。社会部でセクハラ問題、武器輸出、軍学共同、森友・加計問題などを取材。著書に『新聞記者』(角川新書)『THE独裁者』『「安倍晋三」大研究』(KKベストセラーズ)『安倍政治100のファクトチェック』(集英社新書)他。