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名物カメラマン・嬉野雅道「自分の居場所って『いてもいいよ』って言ってくれる人のそば」
~導き出した人生の主導権~

ハンドルは自分で持つ

 レギュラー放送が終了した後も、幅広い世代の人から支持されている番組『水曜どうでしょう』(北海道テレビ放送)。出演する俳優陣と同じように人気を誇っていたのが、カメラを担当していた嬉野雅道さんです。
 嬉野さんは10代の後半から20代前半にかけて、鬱屈した気持ちで日々を送っていたといいます。自身の経験があるからこそ、「子どもたちに『こんな風にすればいいよ』とはアドバイスできない」と話します。様々な思いを巡らせながら、あらためて「いじめ」について語ってもらいました。(『生きづらさを抱えるきみへ』withnews編集部/KKベストセラーズ より

■『水曜どうでしょう』ディレクターが導き出した“人生の主導権”

 

 僕にとっての居場所って、自分に「いてもいいよ」って言ってくれる人のそばなんですよね。だから、もしも誰も僕に興味を持ってくれない、話しかけてもシカトされる、そんな場所だったら、そりゃあきついと思うんだよね、大人でも子どもでも。その場所ではやっていけないと思うよ。

 いじめられてる時って、なんとなくわかるじゃない? 「オレいじめられてるな」って。

 でも、そう思った瞬間、誰だって動揺して、人間は「一番やっちゃいけないこと」をやろうとするんです。

 それは、自分をいじめてる相手と仲良くしようとすることです。変ですね。そんな変なことするでしょうか? するんです。なぜするんでしょうか? それは自分をいじめてるやつが、自分と仲良くしてくれたら、いじめられてるという現実をその瞬間から帳消しにできるんじゃないかって思ってしまうからでしょうね。でもこれは罠です。一番やってはいけない。

 なぜなら、いじめてくる彼が自分と仲良くしてくれるよう仕向けるなんてことは、どんなにがんばっても僕にはできない。だって、僕をいじめるいじめないを決める判断をしているのは彼ですからね。いじめの決定権は彼に委ねられているのですから。そんなやつとこっちから仲良くしようと努力するなんて自分の人生の主導権まで彼に渡してしまうようなものです。

 そんなことをしたらその瞬間から僕の人生は、彼が僕と仲良くしてくれる日を願って待つだけの時間になってしまう。しかも待ってるだけじゃない、いじめられながら待つんです。そんな人生に幸せがあるはずがない。

 願ったところで他人はコントロールできないのです。コントロールできない他人に自分の人生の主導権を渡しちゃダメです。だって彼は僕が何も悪いことをしていないのに一方的に疎外してくる相手なんです。だったら「そいつはもう敵だ」ってことです。そう思っていいんですよ。

 相手は友達なんかじゃなかったんです。「敵」だったんです。敵とは仲良くしなくていいですよね? だって敵なんだから。

 そしたら次にこう思ってください。「いつかひどい目にあわせてやる」って(笑)。

 いや、本当にひどい目にあわせなくていいんですよ。敵はおっかないですからね。敵には内緒で、ひとりで心の中で思うだけでいいんです。でも思うだけで主導権は自分に返ってくるんです。不思議でしょ?

 もちろん、主導権って言ったって、いじめの主導権や世界の主導権を自分が握れるなんてことじゃなくて、自分の人生の主導権ってだけのことです。でも自分の人生を生きてるのは自分なんだから、車の運転をしてるときみたいにハンドルは最後まで自分で持っていないと。ハンドルは自分で持つ、それが主導権です。

 そのハンドルを一時的にでも他人に委ねたら、自分が行きたくないところへ連れていかれるだけの人生になってしまう。そんな人生はきっとハッピーにならないよ、という考え方です。

KEYWORDS:

『生きづらさを抱えるきみへ』
著者:withnews編集部

 

2014年に朝日新聞社がスタートしたニュースサイト「withnews」内の1コーナーが「#withyou」です。この#withyouは2018年4月に始まった「生きづらさを抱える10代」に向けた企画で、「いじめ」や「不登校」、「DV」などを経験したことのある著名人(タレント、ミュージシャン、YouTuber、クリエイター等)が自らの体験談をサイトに掲載したものです。その体験談をひとつにまとめたのが本書。新生活が始まる中、「学校に行きたくない」「死にたい」といった悩みを抱え苦しむ人に、著名人たちが「自分も学校にいかなかった」「自分も不登校生活をしていたけど、今はしっかりと生活できている」「学校に行くだけがすべてじゃない」「好きなことをずっとやり続けていれば大人になっても暮らしていける」といった“安心できる”提案をしています。学校や友達付き合いに悩んでいる人に“学校に行きたくなければ行かなくても全然大丈夫”“今の時代、生きていく道はたくさんある。自ら死を選ばないで”という輪を広げていくことをいちばんの目的とした一冊です。

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