災害が起こっても一部の断水のみで、収まり、おいしい水を供給してくれる日本の水道。こんなときこそ、ありがたみを感じるのだが、その裏側にはさまざまな事情があった。『日本の「水」が危ない』六辻彰二 著より

「安くて安全」の裏側

 

 ただし、日本の水道が「安くて安全」であるとしても、それが今後も続くかは話が別だ。むしろ、日本の水道には難問が山積している。以下では、これを主に、厚生労働省が2017年に発表した資料「水道行政の動向―冬山に挑む水道事業」のデータからみていこう。

 まず、老朽化の問題である。他のインフラと同じく、水道管など水道設備も永久に使えるわけではなく、明治時代から高度経済成長期にかけて敷設された多くの水道管は、すでに寿命を迎えている。法律で定められた耐用年数を過ぎた水道管が全ての水道管に占める割合を、管路経年化率と呼ぶ。2006年に6%だった管路経年化率は、2015年には13・6%とほぼ倍増した。

 老朽化が急速に進む一つの原因は、耐用年数を過ぎた水道管の更新が進んでいないことにある。これを表すのが、更新された水道管が全体に占める割合を示す管路更新率だ。2006年に0・97%だった管路更新率は、2015年には0・74%に下落した。つまり、水道管の老朽化が徐々に進む一方、その付け替えは追い付いていない。この状況が続けば、水漏れや水質悪化を招きかねず、世界屈指の水道システムも存続が難しくなる。

 おまけに、たとえ耐用年数が過ぎていなくても、付け替えが必要な場合もある。地震国である日本では、あらゆる建造物と同じく水道設備にも耐震補強が必要だが、水道管のうち耐震適合性のあるものの割合は、2015年段階の全国平均で37・2%にとどまった。これには地域差も大きく、最も高い神奈川県(67・0%)と最も低い鹿児島県(20・2%)の間に40ポイント以上の差があった。50%を超えているのは神奈川県の他、愛知県(58・4%)、千葉県(54・6%)、福島県(51・9%)の四県にとどまり、ほとんどの都道府県では耐震化が進んでいない。

 こうしてみたとき、「安くて安全」な日本の水道システムは、非常にもろい基盤のうえに成り立っているといえる。