■騎手だからこそわかる!後方待機策のスゴさ

 とにかく、大方のファンは後方ポツンのスタイルに批判的。南関東競馬でもそういう騎乗を積極的に取り入れ、「瀧川スタイル」を貫いていた元地方競馬騎手の瀧川寿樹也も、現役時代のパドックでは「しね」だの「八百長」だのという野次が凄かった。実際に同元騎手のSNSではそういったファンとのやり取りで、炎上したこともあるほどだ。

 一方、そのスタイルは中央、地方問わず、騎手からは高い評価を受けている。以前、地方競馬のトップジョッキー・森泰斗騎手が、憧れの騎手は横山典騎手だと話してくれたことがあった。「本当は横山典さんのように最後方から行ったほうが良いと思うことがあっても、僕は人気薄の馬でしかできない。そう乗っていたら、勝てていたレースもあるから、あそこまで大胆になれることに憧れる」と言っていた。また、戸崎圭太騎手や藤田菜七子騎手も、インタビューで似たようなことを応えていた。

■好位先行ポジはどの馬も取れるわけではない

 騎手がなぜそのように考えるかを説明しよう。まず、騎手が位置取りを決める多くのポイントが「二の脚の速さ」である。二の脚の速さとは、スタートしてからすぐに馬が馬なりで加速する速さである。このスピードが速ければ、楽にいい位置が取れるため、騎手は逃げ、先行させる。逃げると競られる危険性もあるために、気性に問題がなければ、多くの馬は逃げ馬の2列目、一般的に好位と言われる位置を狙ってくることが多い。

 しかし、二の脚が遅い馬が無理に前の位置を取りに行くと、前記したように消耗度が高くなるため、騎手は陣営から指示がない限り、差し、追い込みを選択をすることが多い。もちろん、二の脚の速さは状態の良し悪しにも関係するが、二の脚が速く先行できることそのものが、競走馬として素質の高さであり、強さということになる。

 競馬はよく、先行馬が有利だという。実際にどの競馬場、どのコースを見ても先行馬が非常に多く勝っている。スローペースなら早めに逃げ馬を交わしてもいいし、ハイペースならば騎手の技量にもよるが、位置を下げて待機策をとることも可能だ。そう考えると、確かに「先行」はVポジションではあるが、どの馬でも取れる位置ではないことを忘れないでいてほしい。

■「後方ポツン」は騎手の意気込みを表すサイン

さて、1991年創刊の競馬誌『競馬最強の法則』が休刊になった。この一年、「逃げ馬」をテーマとした連載もさせていただいた。本稿も、秋からの新連載「騎手心理がわかれば勝ち馬がわかる(仮)」として用意していたもの(ご興味ある編集者の方、ご連絡お待ちしてま~す)。

よし、あえて毒づこう。

よく調べもしないで、騎手ばかりを攻めているファンたち、頭は大丈夫か? 

あなた方のやっていることは、赤信号を強引に渡って「車だから止まれ!」と言っているようなもの。また、何でもかんでもデータばかりをファンに提示して、それをきちんと説明しないマスコミにも問題があるだろう。インスタント馬券術では良質なファンが育たなくて当然だ。最後に瀧川元騎手のコメントを残しておこう。

「僕は中央の馬券を買いますけど、馬券を買う立場で後方ポツンをやると、イヤですね(笑)。でも、乗っている立場からすると、あの位置取りは気合いが入っている時なんですね。先行馬は差して通用することがあっても、差し馬は先行すると最後に脚が上がって負けることが多い。後方ポツンは先行して押し切る力がないから、ハイペースになって前がバテた場合に、勝てる一番いい位置を取りにいってると、考えてもらいたいです」

 これを知ったからどうなるの(?)と思うファンもいるかもしれないが、競馬をやり込んでいる人なら、着眼点が変わるか、点で見えていたのが線で繋がるだろう。お役に立てて頂きたい。