■「後方ポツン」騎乗で横山典騎手に大ブーイング

 

 馬群から離れて後方待機。いわゆる「後方ポツン」騎乗といえば、横山典弘騎手が有名。昨年のマーチSでは、同騎手が単勝2.0倍の1番人気馬ハイランドピークがそれをやり、9着に敗れたことからファンから「騎手やめろ!」と大ブーイングを食らった。

 ハイランドピークは以前、横山典騎手の長男・横山和生騎手が主戦を務めていたが、1000万下の初茜賞で横山典騎手に乗り替わって大逃げすると、2着馬に10馬身差をつけての大楽勝。昇級の次走・1600万下の上総Sでも、大逃げして5馬身差の圧勝を飾ったほどの実力馬だ。このことから大方のファンに、マーチSでも当然逃げる、逃げ切るものと思われていた。

 しかし、マーチSでは逃げずに、いつも後方が定番のサンマルデュークあたりと並んで絶望的な位置でレースをしたために、ブーイングを食らったのだ。厳密には13番枠からのスタートで一完歩目で躓いたことで逃げられず、中途半端に先行してコーナーロスが大きくなるよりも、思い切って後方まで下げて逃げ馬と同じ、最短距離を立ち回ることを選択したと言うのが正しい。

 競走馬は、車と同じだ。車でエンジンスタート直後にアクセルを吹かすと燃料消費が激しいように、競走馬もスタート直後に無理に加速すると消耗してしまう。その上でコーナーの外を回ることになれば、コーナーでアクセルを吹かしていかないと、内の馬に遅れを取ることになる。私自身はだからこそ控えて、勝つことを最後まであきらめなかった執念の騎乗だったと認識している。

 それを証明するかのように、今年のマーチSのハイランドピークは横山和騎手に乗り替わり、13番枠で行きっぷりも悪かったが、逃げにこだわり押して押して強引に1コーナーでハナを奪った結果、16着とシンガリ負けを喫している。一方、馬なりのまま位置を取って、差す形となったエルムSでは2着に巻き返している。このことからも、レース序盤で無理に脚を使うのは良くないことだとわかるだろう。

 また、昨年のマーチSは、ハイランドピーク自身のテンションが高く、状態が良くなかったから、気持ちに脚力がついていかずに躓いたのもあったと見ている。私は仲のいい騎手たちから、競走馬は調子が悪いと躓いたり、ミスステップ(自分の肢に自分の肢をぶつける)を踏んで、リズムを欠くと何度も聞かされた。もちろん、それを事前に察知して何とかするのが騎手の役割だが、生き物である以上、どうにもならないほどの調子落ちもあるだろう。

 実際にマーチS後の横山典騎手も「馬も機嫌が良くなかったのか、前2走を派手にぶっちぎったせいか、馬が堪えていたみたいで、結果が良くなくて、どうもすみません」と、コメントしている。