教師のイジメはなぜ起きるのか? | BEST TiMESコラム

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教師のイジメはなぜ起きるのか?

教室以外に潜む教育現場の問題

◆「こども不在」化する学校

学校が「子供が楽しく成長できる場所」ではなくなりつつある…

 子どもたちが、そんな教員を尊敬できるわけがない。自民党の文部科学部会は今年9月4日の会合で、法令用語を「教員」ではなく「教師」で統一することを検討するよう求めていくことを決めている。教員志望者が減っている現状で、「師」と呼ばれることで人気回復をはかろうという狙いらしいが、そんな小手先のことで誤魔化せるものではない。

 裏ではいじめに走る教員の実態を、子どもたちは見抜いている。だから、教員を信用してはいない。たとえ「師」を付けて呼ぶようになっても、それは変わらないはずだ。信用されていないことを実は教員も感じているので、必要以上に怒鳴って子どもたちを従わせようとする。さらに子どもたちは反感をもつ。

 これでは悪循環でしかない。当然、学校全体の雰囲気も明るいわけがない。そんなところで楽しく学べるはずもないのだ。それは、ほんとうの成長につながっていかない。
 子どもたちが楽しく学ぶためには、まずは教員が変わる必要がある。それには、ストレス職員室をなくすことが大前提となる。

 ではなぜ、ストレス職員室になるのか。原因はいたって簡単で、教員が忙しすぎるからである。教員の長時間労働については、さまざまなところで指摘されてきているが、厚生労働省が「過労死ライン」と定めている月80時間の時間外労働をしている教員は小学校で33パーセントを超え、中学校では60%になっている。これは文科省調査(「教員勤務実態調査 2016年度)でのことなので、実態はもっと深刻なはずである。

 同じ調査で教員のストレスを分析したところ、平均して高ストレス状態であることが明らかになっている。特にストレス反応が高値だったのは男女ともに20代の教員で、仕事に不慣れなところにもってきての長時間労働にストレスを感じていると思われる。先輩教員によるパワハラも原因になっている可能性もある。
 ともかく、教員は高いストレスを抱えるくらい多忙である。それも子どもたちと向き合う、つまり「本業」で忙しいならいざしらず、本業以外の仕事で多忙になってしまっているのが実態でもある。

「教育委員会からのアンケートへの回答など、どうでもいいような書類作成が多すぎる。そんな雑用ばかりで、肝心の子どもと接する時間がとれないのが現状です」

 と、小学校の若手教員は嘆く。自分が必要性を感じないような仕事を長時間にわたって強いられるのだから、ストレスも溜まるはずである。そのストレスのはけ口がパワハラとなっていく。

 

◆お上では改善できない現場の問題

 10月4日からはじまった臨時国会では、教員の働き方改革も議題にあがっている。しかし、時間外労働に上限を設けるなど「形」だけのことでしかない。
 文科省は今年1月に、教員の時間外労働に月45時間の上限を設けるように指導している。今臨時国会では、これを法律的なものにしようとしている。

 しかし、ただ上限を設けてみても意味がない。文科省の示したガイドラインを守るために、強制的に教員を帰宅させる学校が増えている。

「下校時間が決められてしまっているので、朝早くに出勤するか、家で仕事するしかありません。仕事の量は減っていませんからね」

 と、中学校の教員は苦笑いする。仕事の「質」が変わらないのでは、上限を設ける「形」だけをいじってみても仕方ないのだ。「形」をつくれば、政治家や文科省は仕事をした気になるのかもしれないが、仕事をしていないのと同じである。むしろ、悪化させることになる。先の中学校教員が続ける。

 「早く帰れ、早く帰れ、と校長や教頭がうるさくいってきます。『なんで早く済ませられないんだ』とネチネチやられたりもします」

 こんなことが、あちこちの学校で起きている。「時短ハラスメント」という言葉も普通に聞かれるようになってきた。学校にいる時間を短くさせるためのハラスメントが、学校で横行しはじめているのだ。
 これでは、まだまだストレス職員室はなくならないだろう。それどころか、さらに深刻度を増すことになる。この問題を解決するには、「形」ではなく、「質」を変える議論こそが必要である。

 それをやらなければ、東須磨小学校のような教員による教員へのいじめはなくならないし、学校が子どもたちが成長していける場にもならない。今回発覚した事件を「東須磨小だけのこと」と他人事で済ませてしまうのではなく、「どの学校にもあること」として考えていく姿勢が強く求められているである。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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