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8月15日前後の休みをなぜ「お盆休み」というのか?――お盆と七夕とねぶたと竿灯祭の意外な関係
~8月の行事を学び直す~

■「季節行事」の意味と由来を知る・8月編

■なぜお盆は月遅れで行われるようになったのか?

 

 そこで今回のテーマである「なぜ8月の休暇がお盆休みと呼ばれるのか?」であるが、結論を先に言ってしまうと、お盆は雛祭りや端午の節句などとは違い、月遅れ(行事を1月遅らせて行うこと)で行う地域が多いからだ。

 さらに言えば、かつては夏の休みは故郷に帰ってお盆行事に参加するものであったことがある。現在では故郷以外の場所に旅行する人が多くなっており、故郷に帰ってもお盆には関わりなく過ごすことも少なくないようだが、「夏休みにはお盆行事に加わって先祖の霊をなぐさめるものだ」という民族的な意識がまだ残っていて、それが「お盆休み」という言葉の使用になっているのだろう。

 

 では、お盆はなぜ月遅れで行われるのか?

 明治6年(1873)、新政府はそれまで使われていた太陰太陽暦(たいいんたいようれき、月の運行を基にした暦で太陽の運行を参考に補正してある、いわゆる旧暦)を廃し、太陽暦を公式の暦とすることを決めた。

 これによって庶民の生活は大きな混乱におちいった。新暦と旧暦では1か月ほどのずれがあったからだ。これでは行事によっては季節感が違ってしまう。たとえば、旧暦の3月3日は桃の花盛りであるが新暦ではまだ寒くつぼみばかりだし、七夕も秋の行事のはずが新暦では梅雨まっ盛りになってしまう。

 このため当初は新暦と旧暦が混用されていたが、新暦が定着していくにつれて行事も新暦で行われるようになっていった。しかし、中には新暦に移行しにくいものもあった。とくにお盆がそうであった。

 というのも、旧暦の7月15日前後は農閑期にあたっていたが、新暦の7月15日前後は逆に農繁期になってしまうからだ。ここから農村部は旧暦もしくは月遅れでお盆を行い、農業とは関わりのない人たちが住む都市部は新暦で行うというねじれ現象が生じた。しかし、都市部の住人も田舎に帰れば農村部の習慣に従うことになるので、夏期休暇は農村部のお盆期間に合わせることになったのだ。

 なお、旧暦ではなく月遅れが一般化したのは、旧暦の7月15日が新暦の何日に当たるかは年によって変わるので計画がたてにくかったからと思われる。

 いっぽう七夕は雛祭りや端午節句と同様に新暦で行われるようになっていった。このため、七夕とお盆は別の月の行事のように思われるようになってしまった。

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渋谷 申博

しぶや のぶひろ

日本宗教史研究家

1960年東京都生まれ。早稲田大学卒業。
神道・仏教など日本の宗教史に関わる執筆活動をするかたわら、全国の社寺・聖地・聖地鉄道などのフィールドワークを続けている。
著書は『聖地鉄道めぐり』、『秘境神社めぐり』、『歴史さんぽ 東京の神社・お寺めぐり』、『一生に一度は参拝したい全国の神社』、『全国 天皇家ゆかりの神社・お寺めぐり』(G.B.)、『神社に秘められた日本書紀の謎』(宝島社)、『諸国神社 一宮・二宮・三宮』(山川出版社)、『眠れなくなるほど面白い 図解 仏教』(日本文芸社)ほか多数。

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