■「民主党時代に戻るのか」というテンプレート

 平成の三〇年間を吹き荒れた構造改革の嵐は、細川政権(実態は小沢政権)、橋本政権、小泉政権、民主党政権を経由して、ついには戦後の政治腐敗の総決算ともいえる安倍政権を生み出した。

 守旧派、抵抗勢力、伏魔殿、「こんな人たち」といった「敵」をでっちあげ、大衆のルサンチマン(恨みつらみ)、嫉妬心、復讐心に火をつけて煽りたてることで、「風に乗って」きた人たちがいる。

 一方、大衆は三度の飯より「改革」が好きである。彼らは善悪二元論的な紙芝居に熱狂し、社会を破壊し、自分たちの足場まで解体した。そしてついには、デフレ下の消費税増税を唱える勢力を支持するという倒錯にまで行き着いた。これが日本経済を破壊するのは火を見るより明らかであるにもかかわらず。

 スペインの哲学者ホセ・オルテガ・イ・ガセットは言った。
「飢饉が原因の暴動では、一般大衆はパンを求めるのが普通だが、なんとそのためにパン屋を破壊するというのが彼らの普通のやり方なのである。この例は、今日の大衆が、彼らをはぐくんでくれる文明に対してとる、いっそう広範で複雑な態度の象徴的な例といえよう」

 安倍とその周辺の勢力の手法はシンプルである。

  異なる意見をもつ人を議論により説得するのは面倒なので、プロパガンダとマーケティングにより社会に一定数存在するバカを誘導する。数の論理で政策を押したほうが手っ取り早いというニヒリズムだ。人間の心の闇、脆弱な部分を狙い撃ちにしたテクノロジーが発達すれば、連中は算盤をはじきながらそれを利用する。

 結局、良心を持たない人間が勝つのが今の世の中だ。

 プロパガンダの最終目標は、対象となる人物が、自分の意志で意見を選択したかのように思わせることだ。単に情報を押し付けるのではなく、たとえば「民主党時代に戻るのか」「安倍さんを批判するのはサヨク」といったテンプレートを拡散し、社会の気分を醸成していく。

 結果、政権の中枢はグローバリストと政商、カルト勢力に乗っ取られてしまった。

 でも、愚痴をこぼしていても仕方がない。今やるべきことは、日本人が日本のために立ち上がることである。安倍政権下でなにが発生していたのかを直視し、法的も道義的にも責任の所在を明らかにし、真っ当な、そして落ち着いた保守政治を再建する必要がある。