最北端の線路

 十数年振りに日本最北端の駅稚内を訪問した。駅は以前訪れたときとは全く違った新しいものとなっていた上に、若干南に移動していた。変わらないのは最北端の駅を示す標柱や看板のみであった。
 往路は旭川発の特急「サロベツ」を利用、復路は稚内発の各駅停車に乗った。特急はともかく各駅停車に乗るというと、何と酔狂な!と驚く人がいるであろう。しかし、早朝6時台の特急を逃すと、次の特急は午後1時台、その間には10時台の各駅停車名寄行きしかないのである。かくも本数が少ない上に、午後の特急に追い抜かれることなく旭川に到着できるのであれば、各駅停車を選ぶという選択肢も必然なのだ。

稚内駅で発車を待つ普通列車名寄行き
各駅停車車内、リクライニングが効く座席だった

 といっても各駅停車を選ぶ利用者は多くない。1両編成のディーゼルカーなので、窓側に座れなかったら悲惨だと思い、早めに改札口に並んだのだが、どう見ても全員余裕で窓側に座れる数の人しか列車を待っていなかった。とはいえ、ステンレス製のキハ54という車両は窓の位置と座席の位置が微妙にずれているので、席によっては車窓を眺めるのに不自由なはずれ席がある。誰よりも早めに並んで、いの一番に車内に入れたのはある意味大正解だった。
 定時に最北端の稚内駅を発車。市街地を走り南稚内駅を出ると、あっという間に人跡未踏の丘陵の中をゆるやかにカーブを繰り返して上って行く。田圃が見られない日本離れした車窓は、道内に住んでいないものにとっては新鮮で、どこかヨーロッパ的である。

利尻島は見えず

 勾配を上り詰めたところで右手に日本海が姿を現す。雲がなく空気が澄んでいれば彼方に利尻島の麗姿が見えるはずなのだが、かすんでいてさっぱり見えない。がっかりだ。

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