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「本なんて読まなくてもネットで十分」の大間違い。“答え”を出さないことに意味がある

今の時代、立ち止まることが必要だ。

■バカは結論を出したがる

 

 フランスの小説家ギュスターヴ・フローベールが言うように、バカは結論を出したがる。

 また、「自分の主張と異なる」ということを理由に相手を非難する。

 ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェは、若者を確実に堕落させる方法があると言った。それは、違う思想を持つ者よりも同じ思想を持つ者を尊重するように指導することであると。

 教育もおかしくなってきている。

 学校では、「自分の立場を明確にしなさい」「自分の主張をはっきり言いなさい」「日本人は自分の意見を言えないから外国でバカにされる」「自立した個人になりなさい」などと教える。

 こんなことをやっているからバカが増える。

 きちんとものを考える人なら、「自分の立場」「自分の主張」「自分の意見」「自立した個人」とはなにかと疑いをもつ。

 わかりやすく説明できる問題は、もともとたいした問題ではない。

 ドイツの哲学者カール・ヤスパースが言うように、そもそも答えが見つからないから問題になっているわけだから。

 「とりかえしのつかない人」はどんな問題に対しても、すぐに答えを出せと言う。

 マークシートの試験問題ではあるまいし、世の中には原理的に答えがでない問題など、山ほどある。

 人間にはわからないまま考え続けなければならない問題がある。

 しかし、社会全体が薄っぺらなものになるにつれ、「答えを出さない」「自分の足場を固めない」「考え続ける」という真面目な態度は軽視されていく。

 脊髄反射のように「対案を示せ!」と騒ぐ、恥知らずが増えた。

 自分がなにほどの存在かもわからないまま、はっきり意見を表明することに恥じらいを覚える。

 自分の意見を主張するのではなく、偉大な先人の意見に学ぶ。

 それが正常な人間だ。

 しかし、今の世の中は、誰もが自分たちが信奉する正義を騒ぎ立て、罵倒を繰り返している。

 サル山でサルが吠えている。

 今の時代、立ち止まることが必要だ。

<『遅読術』より再構成>

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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