楽ありゃ苦もあるさ【森博嗣】新連載「道草の道標」第1回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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楽ありゃ苦もあるさ【森博嗣】新連載「道草の道標」第1回

森博嗣 新連載エッセィ「道草の道標」第1回


森博嗣先生が日々巡らせておられる思索の数々。できるだけ取りこぼさず、言葉の結晶として残したい。森先生のエッセィを読み続けたい。なぜなら、自分の内から湧き上がる力を感じられるから。どれだけ道に迷い込み、彷徨ったとしても、諦めず前に進んでいけることができるから。珠玉の連載エッセィ第4弾「道草の道標」。奇跡のスタートです! 第1回は「楽ありゃ苦もあるさ」


 

第1回 楽ありゃ苦もあるさ

 

【見舞われたトラブル3つ】

 

 『日常のフローチャート』の連載が終わり、今年(2025年)になって、文章を書く仕事がない生活を満喫していたのだが、3月頃からいろいろアクシデントに見舞われることになった。書かないでいるとネタが自然に溜まるの法則。

 連載分に加え、年末に執筆した書下ろし分を併せて4月に単行本が発行となり、また、昨年に上梓した『静かに生きて考える』の文庫化がもうすぐなので、そろそろゲラを見なければならないな、と思っていたら、KKベストセラーズのS氏からメールで、ウェブ連載をまたお願いしたいとの依頼があった。『道なき未知』から続いていた3冊だったから、キリが良いなと勝手に思っていたら、意外にも4冊めか、との可能性を示唆する継続執筆となった。もしかしたら、これが森博嗣最後の仕事となるのではとも考えている。考えているだけだから、気にしないでほしい(といいながら書いている)。

 では、アクシデントの話。まず、僕が担当している大きなシェルティ(シェトランドシープドッグ)の下痢が酷く、病院へ連れていくことになった。彼は生まれて半年くらいのときにマスキングテープを飲み込んだ。医者に催吐剤の注射をしてもらい、吐き出させた。その同じ医者まで連れていった。血液検査やCT検査をしてもらい、腸炎の治療を受けることになった。その後3カ月間も薬を飲み、今は完治している。

 次に、僕の奥様(あえて敬称)が胸の痛みを訴えた。本人はネットで調べて肋間神経痛らしいと自己診断。彼女は、多くの薬アレルギィなので、鎮痛剤が安易に飲めない。3日間我慢した日の早朝、他所行きの服装でめかし込んで起きてきたかと思ったら、救急車を呼んで欲しい、という。というわけで救急搬送され、病院で診察を受けたが原因はわからず。アレルギィを回避する鎮痛剤注射を打ってもらい一旦帰宅。飲む鎮痛剤ももらってきて1週間ほど我慢をしていたものの、やはり痛みが治らない。それで病院で再度検査を受けたところ、帯状疱疹だと判明した。痛みブロック注射で状態は良くなり、その後3週間ほどで完治した。

 犬も奥様もまだ病気の頃、日曜日に街まで2人と1匹で買い物に出かけたら、今度はもらい事故。後ろの後ろの車がノーブレーキで前の車に追突し、その車が弾き飛ばされて、僕の車の後ろに衝突。僕たちはなんともなかったけれど、後ろ2台はドアも開けられないほど変形。突っ込んだ運転手は意識不明で搬送。後ろの車の2人も怪我。2台は廃車。僕の車は、テールライトが割れ、バンパやボディが凹んだけれど、走れる状態だったため、警察の許可を得て帰宅した。その後、僕の車はレッカで200kmほど離れた工場へ修理のために運ばれ、戻ってきたのは1カ月後。修理代や往復のレッカ代は、誰が出したのか知らない(一番後ろの車の運転手か、彼の会社のはず)。とにかく、時間は取られたが、お金を出すことはなかった。僕の車はピカピカになって戻ってきた。詳しくは聞いていないが、修理代と運賃はたぶん100万円くらいだったのではないか。

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森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

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