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20年周期で発生する? 相撲と将棋の再ブーム

キーワードで振り返る平成30年史 第10回

相撲ブームと将棋ブーム
~平成3年(1991)〜平成8年(1996)~

illustration:TADASHI SATO

 平成29年、ふたつの伝統的な競技に注目が集まった。ひとつは相撲、そしてもうひとつが将棋だ。相撲と将棋とは随分離れたカテゴリーに見えるが、ファン層はかなり重なっていて、どちらもその歴史は古く、既に江戸時代には強さの公認化、体系化が図られたという共通点もある。

 そしてこのふたつの競技はどちらも平成になって一度大ブームを経験している。相撲ブームを引き起こしたのは昭和の人気力士貴ノ花の血を引く若乃花と貴乃花の若貴兄弟。従来は老人とオヤジの趣味だった相撲観戦に若い女性たちが押し寄せるようになったのはこの時代のこと。平成4年には相撲好きという従来のヒロイン像にはなかった主人公を石田ひかりが演じたNHK朝ドラ「ひらり」も、これまた若い女性の人気を集めたドリカムことDREAMS COME TRUEの歌う主題歌とともに大ヒットした。

 

 一方の将棋も羽生善治というひとりの天才の登場で一気に注目を集める。寝癖の残る髪を気にもしない童顔の羽生青年は、平成6年、将棋界初の6大タイトル保持者となる。それから2年後には前代未聞の7冠を達成。あまり一般メディアには縁のなかったプロ棋士の日常生活や一挙手一投足が地上波のワイドショーを賑わすようになり、まだ元気のあった百貨店などを会場に実施された将棋フェアには老若男女問わず多くのファンが集まった。将棋もまた平成8年に朝ドラの題材になり、マナカナが幼少期を演じた双子がヒロインの「ふたりっ子」の中で描かれた。ちなみにこちらの主題歌はNOKKOの「人魚」。

 相撲と将棋、いずれも人気と実力を兼ね備えた若き天才の出現、それをきっかけにさまざまな媒体で取り上げられ題材とされるという形でブームを経験しているが、ブームというのはいつかは過ぎ去るもの。その後、相撲も将棋も伝統があるだけに消えはしないものの、新規ファン獲得に苦労する不遇の時期を迎えた。そして現在、どちらも再び従来のファン以外からも注目を集めるジャンルになっている。
 20年というのはひとつの周期なのかもしれない。子供の頃にブームを経験し憧れを抱いた人たちが、成人し子を持ち、今度は自分の子にその魅力を伝える。青年期にブームを経験した層が、各界で影響力を持つ年齢にさしかかり、改めて自分たちの手で題材として採り上げる。20年周期で発生するリバイバルの背景にあるのはそんな事情だろう。次に来るのは競馬か、それともウィンタースポーツか。まさに時代は巡るのだ。

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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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