「30問30答」スペシャルバージョン! 新刊『壁』を発売した野村克也氏がWBC日本代表の戦いを振り返る。お眼鏡にかなった二人の選手とは?

その実力を日本どころか、世界にもアピールできた菊池と千賀

写真/高橋亘

 私の眼からも印象的だったのは、セカンドの菊池涼介(広島カープ)とピッチャーの千賀滉大(ソフトバンクホークス)ですね。

 まず菊池は、準決勝で失点につながるミスはしたものの、WBCでもその守備力をいかんなく発揮しましたよね。

 もともと守備には定評がある選手ですが、私がこれまで見てきたセカンドの中でもAクラスなのは間違いありません。

 普通なら外野に抜けているだろう打球を何度も止めてくれるわけですから、バッテリーは本当に助かるんですよ、こういう選手は。

 2次ラウンドのオランダ戦で見せたファインプレーは、アメリカのメディアでも「菊池は魔法使いだ」と大絶賛されていたようだね。

 菊池の良さは、捕球の上手さはもちろんだが、なんと言っても頭を使って守備をしている点。

 私は試合中の菊池動作をずっと見てたんですけど、セカンドからキャッチャーが出すサインを実によく見ているんですよ。

 これは多分、バッテリー間のサインをおそらく知っているんでしょうね。

 私が南海ホークスの選手時代は、セカンドは、元メジャーリーガーのブレイザーでした。彼が入団して来たときに、いきなり聞いてきたのが、バッテリーのサインについてだったんですよ。

 ブレイザーが、バッテリー間のサインによって打球だ飛んで来る位置を予測するということを知り、「メジャーリーグの選手はこんなに緻密なことを考えているのか」と驚きましたよ。

 菊池もそれと同じことをしているのではないかと思いました。

 球種やコースによって打球が飛んでくる確率が高い地点を予測しているからこそ、最適な守備位置を選ぶことができますし、打球に対するスタートも速くなる。

 それが菊池の守備範囲の広さにもつながり、数々のファインプレーを生んでいるわけです。

 それと、あまり選手を褒めたことのない私ですが、千賀も才能のある選手だね。先発、中継ぎとして4試合に登板して防御率0.82をマーク、チームに大きく貢献した。

 彼の最大の武器は、言うまでもなく“お化けフォーク”と呼ばれる落差の激しいフォークボールだけど、150キロを超えるストレートを投げられることがその効果をより高めている。

 とにかく腕の振りがいいんだよ。ストレートとフォークの腕の振りがほとんど変わらず、しかも目いっぱい腕を使って投げる。

 フォークが他の変化球と大きく違うのは、打者の手前、言ってみれば手元で変化することなんだ。他の変化球とは大きく対応が変わって来る。バッターにしてみると、ストレートが来ると思ってバットを振ってしまうと、手元でボールが急激に落ちるわけ。これには、どうしても空振りしてしまう。幻惑されてしまうんですよ。

 特にメジャーリーグでは、肘や肩を壊すという迷信からか、フォークを投げるピッチャーがあまりいませんから、メジャーリーガーはフォークに慣れていません。

 だからこそ、想像以上に“お化けフォーク”は有効だったと思いますよ。

 千賀は決して全国的に知名度が高いピッチャーではありませんでしたが、今回のWBCでは日本選手で唯一ベストナインに選ばれた。菊池ともども、その実力を日本どころか、世界にアピールできたんじゃないですかね。

明日の第二十六回の質問は「Q.26 熱戦が続いたWBC。国際試合で重要視するべき点は何ですか? それを象徴したシーンは?」です。