・注目されたい「パヨク」と「ウヨク」

 千葉氏の筆致はさらに「パヨク」叩きに激しくなるが、その筆致が激しくなればなるほど、千葉氏が離別したはずの「パヨク」は、限りなく360度回転して「ウヨク」に近づいていく。いやむしろ「ウヨク」そのものとイコールになっていく。

 

千葉氏)私(千葉麗子)が脱原発・反原発のパヨクから離れた理由の一つに彼らが本心から原発のことを考えて行動しているわけではないという疑念がありました。原発事故や福島の状況を理解し、共感してでの行動ではなく、原発運動を訴えると注目される、つまり政治的目的などのために脱原発を主張し、その運動に乗っかり、利用しようとしていたのではないか(P.68「要はビジネスみたいなもの」)

 

置き換え)保守派が本心から日本のことを考えて行動しているわけではないという疑念がありました。在日コリアンや戦没者の状況を理解し、共感してでの行動ではなく、日韓断交などを始めとする嫌韓的姿勢や教条的な9条破棄を訴えると注目される、つまり保守派内部に向けた政治的目的などのために反メディアや威勢のよい排外的言説を主張し、その運動に乗っかり、利用しようとしていたのではないか

 

 このように、「パヨク」を「保守派」「右派」に置き換えただけでその意味がすべて通じるという奇文を読んだのは、当方としては、はじめての読書経験であったので逆説的に極めて貴重と言わなければならない。さらに千葉氏の「パヨク斬り」は続く。

 

・やがて最後はあさま山荘事件に向かう(?)かもしれない極左と極右

千葉氏)浅間山荘事件が起きた時、私はまだ生まれていませんでしたが、当時の様子を知る人に話を聞くとそれは恐ろしい事件であったといいます。理想を目指してともに戦った仲間同士が殺しあう、こんな悲しいことはありません。(中略)自分たち以外は認めないというスタンスを続ける限り、やがてそういう(浅間山荘事件的な)結末を迎えそうな気がしてならないのです。(P.79「やがて最後は浅間山荘事件?」)

 

置き換え)反民主党を目指してともに戦った仲間同士が誹謗中傷しあう、こんな悲しいことはありません。(中略)自分たち以外は認めないというスタンスを続ける限り、やがてそういう(浅間山荘事件的な)結末を迎えそうな気がしてならないのです。

 

 これも千葉氏の慧眼ともいうべき分析であろう。対立と分裂を繰り返す極左「パヨク」を千葉氏は揶揄しているが、この「対立と分裂」こそ、反民主党という共通目標を失った2012年以降の第二次安倍政権誕生以降の右派界隈の分裂と内紛を的確に指摘したものである(詳細は、拙著『ネット右翼の終わり』晶文社、などを参照されたい)。
 陣営内部の分裂によって引き起こされた「内戦」ともいうべき対立の構造は、昨今の保守・右派界隈を見渡しても、まるでマグマの噴出のように大小、吹き荒れている。
 千葉氏の指摘は、「対立と分裂」という宿痾が極左と極右において予定説的に繰り返されることを暗示した壮大な文明史的視点であり、実に正鵠を得ていると言わなければならないのである。

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