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日本のマスコミはなぜ「反日」なのか?

インタビュー『反日メディアの正体』著者・ 古谷経衡

朝日、毎日、NHK、フジ……。彼らはなぜ、売国的な報道をし続けるのか?母国・日本を貶めるマスメディアの系譜を紐解き、それを支えた「戦後体制(ガラパゴス)」の病理を分析した注目作がついに発売!
『反日メディアの正体―「戦後体制(ガラパゴス)」に残る病理』の著者・古谷経衡氏に、「反日」の問題点について語ってもらった。
 

インタビュー『反日メディアの正体』著者・ 古谷経衡

Q.本書『反日メディアの正体』を執筆しようと思った動機をお聞かせください。

 

古谷 これまでにも、「反日メディア」をテーマにした書籍やムックが出版されていますが、それらに書かれていること以外に、何か違う原因が隠されているのではないかと、僕は感じていました―。

本書の中では、マスメディアの「反日」を、「確信的反日」と「無自覚な反日」に分けて論じています。「確信的反日」は、故意の反日のことです。自動車の運転にたとえるなら、飲酒運転のような、悪意がある行為ですね。

これまで出版された類書は、主にその故意の反日を分析していました。先ほどの飲酒運転の例で言えば、「なぜ、この人はお酒を飲んでいるのに、運転するか」を追及していたのです。 
 
もちろん、それはそれで大変意義のあることですが、僕は「確信的反日」ではなく、「良かれと思ってやっている」「やっている本人にもぜんぜん自覚がない」という「無自覚な反日」ほうが、テレビや新聞を見るかぎり、多いとのではないかと思うのです。
「こんな道路標識は知らなかった。ここ、一時停止だったんですか?」というような。

 

Q.確かに、いままでは「確信的反日」が問題視されてきました。

古谷 当然、「確信的反日」は、重罪ですよ。例えば、安倍首相が官房長官だった時代に起きた「安倍晋三印象操作事件」。これは731部隊の極秘計画を報道したTBSの番組内に、関係のない安倍さんの顔写真が映しだされるという前代未聞の珍事でしたが、サブミリナルの疑いで、TBSは総務庁から注意を受けました。これはもう確信犯。

「毎日新聞変態記事事件」は、日本人(とくに日本女性)のでたらめな情報を世界に発信していたとんでもないものでした。この事件は、ライアン・コネルというオーストラリア出身の記者が、たぶん反日と言うか、日本人女性を見下していたことで起こった。

あるいは、1989年の「朝日新聞サンゴ礁捏造事件」。この事件は有名ですので、みなさんもご存知だと思いますが、これは本田というカメラマンがあきらかに自作自演した、日本を貶める捏造事件でした。

このようなひどい反日的な事件もあって、現在でもたびたび行われているのですが、それだけでは説明できない「異常性」がマスメディアの中にある。それが「無自覚な反日」だと、私は思うのです。

 

Q.その「無自覚な反日」について、もう少しお話しいただけますか?

古谷 「無自覚な反日」とは、一言でいうと、感覚のズレなんです。一般の日本国民からは決して出てこないような感覚が、マスコミ人にはある。または、国民が普通に持っている感覚が、マスコミ人にはない。この市井の日本人と遊離した「ズレた感覚」が、マスメディアの奇妙な報道につながっていると思います。

 

Q.最近、保守系雑誌やインターネット上で、「反日メディア」について、盛んに論争されていますが、この現状をどうお考えですか?

古谷 「反日メディア」は、実は単独で存在しているわけではない。この本にも書きましたが、「反日メディア」は「戦後体制」そのもの。それは、戦後民主的な価値観である「反権力」「反体制」です。ところが、我が国のマスメディアは、「反権力という権力」「反体制という体制」になっている。それが、問題なのです。 

先ほど「反日メディア」は単独で存在しているわけではないと言いましたが、それは戦後民主主義な考え方を、これまで我々国民が支持とまでいかなくとも、少なくともあまり疑問に思ってこなかった。それがここ10年くらいで、戦後民主主義そのものに対して、国民が距離をとるようになってきた。だから結果的に、その傍らにあったテレビや新聞が、「反日メディア」に「思えてきた」というだけだと思うのです。

このような状況下で、「反日メディア」を扱った雑誌が人気を博していることは理にかなっています。つまり、体制を愛せなくなってしまった国民の受け皿として、その種の雑誌やWEBサイトが出てきたのです。

ですから、いままでのマスメディアが突然「反日メディア」になったわけではなく、国民の感覚が変ったことによって、「反日メディア」になってしまったのです。

 

Q.それでは、日本国民が「戦後民主主義的な感覚」から変化した理由は何でしょう?

古谷 正確には変化しつつあるですが。それは世界情勢の変化、「冷戦が終わった」ということでしょうね。

戦後民主主義というのは、矛盾なんですね。「平和が大事」と言っていましたが、その平和は、米軍や自衛隊の防衛力、さらには核の傘によって守られていたものです。「憲法を守りましょう」も、米軍の軍事力に支えられたもの。

その矛盾を、矛盾と知りながら愛してきたのが、まさに戦後体制だと思うのですが、それが世界のパワーバランスの変化とともに、変ってしまった。端的に言えば、きれいごとだけでは、生きていけなくなってきた。きれいごとを言って、ナアナアに済ませていたことが、もうできなくなった。ちょっとシビアな状況になってきたのです。

もうひとつは、制度疲労というか、耐用年数が過ぎてしまったのかもしれません。

戦後体制は、もう70年あまり続いていますよね。よく言われることですが、歴史は60年から80年周期で変化します。これには、明確な理由はなく、ひとつの時代が終わって、新しい時代になっていくという歴史の必然だと思います。

 

Q.もうひとつ、最近「嫌韓」の感情が、国内に広がっているように感じるのですが?

古谷 これまでの戦後民主義のマスメディアの中で、もっとも黙殺されてきたのが韓国のニュースです。

戦後長らく、韓国と自民党はずっと親密でした。そして、近年まで、韓国は自民党―朴正煕の時代がそうでしたが、日本の子分みたいなものでした。

日本の保守層も、「戦時中、韓国が日本の一部として戦争を戦ったこと」「北朝鮮の防波堤として韓国には頑張ってもらいたいという気持ち」があり、韓国へのバッシングをタブーとしてきた。その思いがいちばん強かったのが、フジサンケイグループです。

しかし、ソ連が崩壊したことによって、韓国が北朝鮮に対して「太陽政策」をはじめるようになった。北朝鮮は同じ民族だということで、韓国はどんどん宥和的になっていく。そして韓国は、とうとう「反共国家」から「反日国家」に変ってしまったのです。

その韓国側の「反日」問題がどんどん噴出してくるのですが、日本のマスメディア体制はまったく変っていないので、韓国バッシングがタブーのままなのです。この日本国民とマスメディアの意識のズレが、フジテレビデモを引き起こしたのだと思います。

 

Q.テレビや新聞などでは、「最近、若者が右傾化している」と言われていますが?

古谷 何をもって「右傾化」とするのかはわかりませんが、僕は「若者は右傾化していない」と思います。

左翼の人が言う「若者が右傾化している」は、事実誤認です。本当に若者が右傾化しているのであれば、今夏の参院選で、山本太郎議員がなぜ66万票も取ったのか。もし彼が全国比例で出馬していたら、いったい何万票獲得したのか。山本議員に投票した人がすべて若者だとは言いませんが、かなりの割合で若者が投票したことは容易に想像できます。

一方、保守層のほうは、願望です。確かに近年、保守陣営のシンポジウムに、20代の若者も混じるようになってきていますが、それはあくまでもマイノリティであって、それが珍しくて目立つから、さも増えているように感じるだけです。

 

Q.ここで話しを変えましょう。古谷さんが、いまいちばん気になるニュースは?

古谷 それは、特定秘密保護法(12月6日に成立)です。

驚いたのは、マスメディアは強行採決などと言っていますが、よく通ったな、と。僕は、案外すんなり通った印象を受けました。

衆議院は与党が圧倒的多数なので通りますね。それで朝日新聞は、「参議院に期待する」と書くわけですが、スッと通ってしまった。たぶん、20~30年前であれば、こういった法案は上程さえされないと思います。自民党内で少し議論して、立ち消えになるだけだったでしょう。

それがいまでは立派な法案となり、衆議院でスッと通って、参議院では少し揉めたけれどもすぐ通った。ひと昔前だったら、ひとつの内閣がふっとぶ案件だったはずです。

今回、朝日新聞はこの法案可決を受け、「安倍政権の支持率が下がった!」と書きましたが、よくよく本文を読んでみると、成立前の支持率(朝日新聞調べ)が49%で、成立後の支持率が46%なんです。たった3%って、誤差の範囲じゃないですか。結局、あまり下がっていないんですね。

ほとんどの国民が、国会の前で「法案反対!」を叫んでいた人たちを見ても、彼らは頓狂な人たちで、左翼の一部だとわかっているんです。

そして理由はともかく、皮膚感覚で「この法案って、必要なんじゃないの」と、多くの国民が思っていたからこそ、内閣支持率もほとんど変らなかったのです。この法案が、スッと通るということは、日本人の意識がかなり変ってきた証左だと思います。

 

Q.やはり日本人の危機感が根底にあるのでしょうか?

古谷 そうですね。中国がこれだけ軍事大国化しましたし……。最近も「防空識別圏」を新たに設定したことが問題になりましたね。

冷戦時代は、なんだかんだ言っても、親方「アメリカ」がいた。日本はエコノミック・アニマルになって好き勝手やっても、最後は親方にケツを拭いてもらっていたのです。

そして、基本的にあの時代の日本は、アジアの中で圧倒的に強かった。中国は「文化大革命」などでめちゃくちゃ。韓国も超貧乏国でした。アジアで日本に対抗できる国はなく、正直ほとんどザコでした。だから日本は好きなことが言えた。理想論だけでもやっていけた環境だったのです。

それがいまでは、一方では中国が力をつけ、韓国も力はないかもしれないがうるさくなってきた。このような国際状況の変化を、日本人が敏感に感じとっているのでしょう。

 

Q.今回の作品『反日メディアの正体』で、苦労したされた点は?

古谷 それは、原稿を書く場所ですね! 普段、雑誌などに寄稿するときは自宅で執筆しますが、本書のように250ページもの書き下ろしの場合は、別の場所で執筆することが多いんです。僕は自宅で猫を飼っているのですが、どうしても猫が気になって、気になって、集中できないんです(笑)。

今回は、クルマで夜中1時間以内に行けて、昼間は渋滞で帰りづらい場所を探しました。それは、茨城県しかないだろう、と。僕の自宅から茨城県の某市までが、ちょうどいい距離間だったので。

夜10時に自宅を出ると11時に茨城に着くので、マンガ喫茶に入って翌朝の8時まで書く。朝になるとクタクタで、自宅に帰れないので、そこから近いラブホテルにフリータイムで入って、夕方4時くらいまで寝るんです。

 

Q.ラブホホテルはお一人で?

古谷 もちろん、一人です! 最近のラブホは、お一人様大歓迎なんです(笑)。それもお徳な値段(4000円前後)で、入れます(笑)。

そしてまた、夜になるとマン喫に行って朝まで書く。そしてまた、ラブホで寝る。そういう昼夜逆転の生活をして書き上げたことが、いちばんの苦労というか、思い出です。

 

Q.古谷さんは、マンガやアニメなどサブカル系にもお詳しいですが、日本のマスメディアを題材にした、おすすめの作品はありますか?

古谷 本書の中でも書きましたが、『国民クイズ』加藤伸吉(画)と杉元伶一(物語)(大田出版)ですね。これは、バブル時代に書かれた作品ですが、とても面白い。

どういう話かと言いますと、この作品世界では、資本主義の次にくるのは、「国民クイズ体制」というイデオロギーだとしています。『国民クイズ』はテレビ番組なんですが、国民(視聴者)はミリオネアみたいにその番組に出場するわけです。そこで確か全問正解すると、その人の願いごとが何でも叶う。『国民クイズ』によって、大衆のエゴが実現する。

その世界の日本は、『国民クイズ』をつくっているテレビ局が支配する「洗脳空間」なんです。国会議員も高級官僚もテレビ局より下の存在でしかない。

そして、「国民クイズ体制」が大成功している日本が、世界の盟主になっている。国連の常任理事国になり、国連議長も日本人。アメリカをアゴで使い、第七艦隊もレンタルしている。当時の世相を反映した話も入っています。

最後は、主人公を含めた「国民クイズ体制」を打倒しようとする勢力が、革命を起こそうとします。

20年以上まえの作品なので、ネタバレしてもいいですよね。

 (以下、ネタバレ)

古谷 結局、革命は起こせないんです。なぜかと言うと、国民(視聴者)が、「国民クイズ体制」を倒すことを許さなかった。主人公たちが、国民に問いかけるシーンがあるのですが、「国民クイズをやめるなー」と大衆の反発を受ける。熱烈というか、無意識的な支持を受けて、『国民クイズ』は終わらなかった……。

この作品は、マスメディアを信仰している、ある種の日本人を皮肉っていると思うんです。バブルの時代でしたし、マスメディアが体制になっていた。まあ、いまもそうですが。それを全力で支持しているのは、テレビ局の中の人だけじゃなくて、実はレベルの低い国民大衆だったというオチでもあるのです。

「反日メディア」は、もちろん悪い、確かに悪いですが、一方で我々がそれを支持してきたわけじゃないですか。いまは気づきましたけど……。

その現実の日本社会と「国民クイズ体制」は非常に似ているんですね。それを示唆的にあらわしているのがこの『国民クイズ』です。だから、とても面白い。かなりカルト的な人気のあるマンガですが、僕も大好きな作品です。

Q.最後に、一言お願いします。

古谷 本書『反日メディアの正体』のように、「反日メディア」の無自覚さを分析した本は、いままでなかったと思います。良かれと思って、番組や紙面をつくっているマスコミ人こそが、反日メディアの正体ではないでしょうか。

そして、僕らの中にもある、なんとなく平和主義、なんとなく左翼、なんとなくリベラルな感覚も、同様に問題なのだと思います。

 <了>

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古谷 経衡

ふるや つねひら

評論家、著述家。1982年北海道札幌市生まれ。立命館大学文学部史学科卒。インターネットと「保守」、メディア問題、アニメ評論など多岐にわたって評論、執筆活動を行っている。主な著作に、『知られざる台湾の「反韓」』(PHP研究所)、『もう、無韓心でいい』(ワック)、『反日メディアの正体』『欲望のすすめ』(小社)など。

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