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シビ辛マーボーには”チューハイ”!辛口カレーには…”ジャスミン茶”? 辛味×飲料 その意外な相性

~家庭における「辛味」のトレンドを食MAP(R)にて調査~

8月も半ばを過ぎました。気象庁の1か月予報によれば、向こう1か月の気温は平年よりも高く、今年もこれから厳しい残暑が待ち受けていると見込まれています。
身も心もぐったりとしてしまうような暑さの中、唐辛子やスパイスの効いた辛味メニューを食べてリフレッシュしたいという人もいるのではないでしょうか。今回は食卓における「辛味」に焦点を当て、食卓における「辛味」のトレンドの変遷や、その喫食実態を探りました。

「シビ辛商品」の出現は20年間で2倍以上に増加
激辛ブームと言われる昨今ですが、家庭内食においても辛味系の商品は年々食卓への出現を拡大させています。
図1は商品名に「辛さ」を連想させる語句を含んだ商品のTI値(1000食卓あたりの出現回数)を表しています。データを見ると、シビ辛系の商品は直近20年間で2倍以上に、デス辛系の商品は5倍以上まで出現を伸ばしてきたことが分かります。
今、家庭の食事では単なる辛口ではなく、「舌が痺れるエスニックな辛さ」や、「一般的な辛口を上回る、より強烈で刺激的な辛さ」の人気が高まりつつあるようです。


図1. 辛味系商品のTI値 経年推移(分析期間:2001/4/1~2025/3/31, 食卓機会:三食計(朝・昼・夕食), 指標:TI値(1000食卓あたりの出現回数))


これらの辛味系商品は具体的にどのような食材なのでしょうか。その内訳を示したのが図2です。
「大辛」商品は全体の70%、「シビ辛」商品は全体の83%をスパイス・調味料が占めています。「デス辛」は即席麺や菓子類が全体の75%を占めていました。辛さの強さや種類により、カテゴリ別のシェア率が大きく異なることが分かります。


図2. 材料カテゴリ別 辛味系商品の内訳(分析期間:2001/4/1~2025/3/31, 食卓機会:三食計(朝・昼・夕食))


甘口カレーを食べているのは30~40代の大人?
ところで、家庭内で辛いものを食べているのは具体的には誰なのでしょうか。
今回は辛味系メニューの中から、カレーライスとマーボー豆腐に焦点を当て、それらのメニューを食べている人を「年代」を切り口に分析しました。

図3・4は喫食者年代別の、甘口カレーライス(調理に甘口のルウ使用したカレーライス)と、辛口・大辛カレーライス(調理に辛口・大辛のルウ使用したカレーライス)のTI値を表しています。
これを見ると、甘口は10代以下の子供のほか、30~40代の大人が、辛口は20代の若い世代、60 歳以上のシニアがよく食べていることが分かります。


図3. 喫食者年代別 甘口カレーライスのTI値(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値)

図4. 喫食者年代別 辛口カレーライスのTI値(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値)


年齢差から見て、甘口を食べる10代以下と30~40代、辛口を食べる20代と60代以上はそれぞれ親世代・子世代の関係と言えそうです。そうであるならば、家庭でも個食が増えつつ現代において、カレーライスは親子で同じ味覚を共有できる「家庭の味」を代表するメニューの1つなのかもしれません。
ただ、この甘口を食べる親世代は、その優しい味わいに満足できているのでしょうか。

小さな子供がいる世帯のカレーライスと言えば、2つの鍋を使って子供用の甘口、大人用の辛口のカレーをそれぞれ用意するという家庭もあるでしょう。しかしこの結果からは、まだ辛いものを食べられない我が子に合わせ、同じ甘口カレーを食べる親も少なからず存在するという実態が見えてきます。
この、現状「子供に合わせて甘口を食べている大人」をターゲットに、"大人も満足できる甘口"という新たな選択肢を示すことができれば、「自ら甘口を選択する」新たな甘口カレーファンの獲得に繋がりそうです。


上記と同様の分析をマーボー豆腐全体(調理時にマーボー豆腐の素を使用したものに限定)と、シビ辛系マーボー豆腐(調理時に「四川風」や「シビ辛」を謳った素を使用したものに限定)を対象に行った結果が図5・6です。

図5より、マーボー豆腐全体は大人を中心に幅広い年代に食べられています。10代から喫食機会が増え、20代では全年代の内で最もTI値が大きくなります。マーボー豆腐カテゴリにおいては、ターゲットが辛味デビューをする10代の心をいかに掴むかが新規ファン獲得のカギの1つになりそうです。

一方のシビ辛系マーボー豆腐では、TI値自体は小さいながら20代のTI値が突出するという、特徴的な結果が見られました。近年の家庭内食でのシビ辛の拡大(図1)は、流行への感度が高く、まだ子供も持たない20代前後の若者の嗜好が大きく寄与していると考えられます。


図5. 喫食者年代別 マーボー豆腐全体のTI値(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値)

図6. 喫食者年代別 シビ辛系マーボー豆腐のTI値(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値)


辛口カレーに"ジャスミン茶"?その意外な相性
辛いものを食べると、次は喉を潤したくなります。次はカレーライス、マーボー豆腐と飲み物の相性について見ていきます。
皆さんはこれらのメニューとどんな飲み物を合わせるでしょうか。

表1・2は甘口カレーライス、辛口カレーライスと同時に飲まれた飲料・アルコールメニューのランキングです。ランキング上位ほど、通常時と比較してカレーライスの出た食卓という条件下で出現しやすく、相性の良いメニューであると言えます。

表1より、甘口カレーライスと一緒に飲まれることが多いのは麦茶、牛乳、乳酸飲料・希釈飲料など、子供の好む飲料であることが分かりました。これは甘口カレーライスの主な喫食者が10代以下の子供であるためと考えられます。
一方、表2の辛口カレーライスについては、ジャスミン茶、ウーロン茶などの中国茶が上位にランクインしました。麦茶や日本茶にはない独特の華やかな香りは、スパイシーで食べ応えのある辛口カレーライスと相性が良いとして食卓で好まれているようです。


表1. 甘口カレーライスと同時出現する飲料メニューランキング(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値・TI値差分)

表2. 辛口カレーライスと同時出現する飲料メニューランキング(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値・TI値差分)



同様の分析をマーボー豆腐全体、シビ辛系マーボー豆腐に対しても行った結果が表3・4です。

まずマーボー豆腐全体(表3)から見ると、麦茶や緑茶、ウーロン茶など、甘口カレーライス同様、子供も飲めるお茶系の飲料が上位にランクインしています。
ではシビ辛系マーボー豆腐(表4)はというと、チューハイ、ビールといったアルコールメニューが上位に目立ちます。スパイシーで刺激的な味わいのシビ辛系マーボー豆腐はアルコールとともに楽しみたいメニューであるようです。


表3. マーボー豆腐全体と同時出現する飲料メニューランキング(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値・TI値差分) ※マーボー豆腐出現食卓数:8,651

表4. シビ辛系マーボー豆腐と同時出現する飲料メニューランキング(分析期間:2022/4/1~2025/3/31 3年計, 食卓機会:夕食, 指標:TI値・TI値差分) ※シビ辛系マーボー豆腐出現食卓数:1,160


以上の結果より、辛味系メニューの中でも「カレーライスには中国茶」、「シビ辛系マーボー豆腐にはアルコール」のように、メニューカテゴリや味わい別に求められる飲料にははっきりとした差があることが分かりました。


食生活の多様化により、今では家庭で体験できる味わいにも多くの選択肢が存在します。そんな現代においては、「辛味」や「甘味」、「塩味」といった言葉では、生活者の求めるおいしさを真に捉えるにはいささか抽象的かもしれません。辛味の中でも、どんな種類の辛味なのか。そこまで深掘りをして初めて発見できるインサイトもありそうです。



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