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転職サービス「doda」、「2024年度版 決定年収レポート」を発表

人材不足を背景に平均決定年収は過去6年で約40万円上昇、転職者の約6割が転職後に年収アップ。ベテラン・即戦力採用を強化した「IT・通信」や「技術職(組み込みエンジニア)」は前年度比15万円以上アップ

パーソルキャリア株式会社が運営する転職サービス「doda(デューダ)」(編集長:桜井 貴史)は、「2024年度版  決定年収レポート」を発表します。本レポートでは2019年4月~2024年3月の期間に「doda」のエージェントサービスを利用して転職した個人のデータをもとに、年度別で決定年収※1の推移や転職前後の年収変動を分析したものです。また、業種・職種ごとに2023年度と2024年度を比較し決定年収の上昇幅をランキング形式でまとめました。
※1:転職者を受け入れる企業が、採用決定時に個人に対して提示する年収

【結果サマリ】

決定年収の推移(2019年度~2024年度)
・決定年収は6年間で約40万円上昇。転職で年収アップした個人の割合は59.3%と過去6年間で最高を記録
…深刻な人材不足を背景に、大手企業を中心とした賃上げに動く業界の拡大、DXや事業多角化による異業種採用の増加が決定年収を押し上げたと推察

決定年収上昇幅ランキング(2023年度・2024年度比較)
・業種別 前年度比で平均決定年収の上昇幅が最もアップしたのは「IT・通信」で+17万円
…即戦力採用意向が強まり、生成AIやクラウド活用ができるエンジニアの需要が高まったことが一因に
…2位は「旅行・宿泊・レジャー」で+15万円、3位は「エネルギー(電力・ガス・石油・新エネルギー)で+14万円
・職種別 前年度比で平均決定年収の上昇幅が最もアップしたのは「技術職(組み込みソフトウェア)」で+15万円
…電気自動車、防衛設備、倉庫ロボットなど開発スピードが高速化、希少なベテラン人材の確保が急務になったことが一因に
…2位は「クリエイター・クリエイティブ職」で+14万円、3位は「企画・管理」で+13万円

決定年収の推移(2019年度~2024年度)







決定年収は6年間で約40万円上昇。転職で年収アップした個人の割合は59.3%と過去6年間で最高を記録
2019年度から2024年度にかけて、平均決定年収額が39万円上昇したことが本調査で明らかになりました(図1.)。また、転職前後の年収変動では、年収が「増加」した個人の割合が2019年度の51.9%から2024年度には59.3%へ、約10ポイント上昇し、過去6年間で最高を記録。転職により年収アップを実現する人が増加しています。(図2.)
2024年度に決定年収がさらに増加した理由として、深刻な人材不足を背景に、「賃上げに動く業界の拡大」と「業態変革による異業種採用の増加」などが影響していると推測します。まず個人側で見ると、大手企業を中心にベースアップの動きが加速したことにより、市場全体の平均年収が上昇。現職での年収アップが叶いやすくなったことにより、転職時には更なる年収アップを求める個人が増加している傾向にあります。
一方、企業側では、DXや事業の多角化などの業態変革を背景に、異業種からの管理職経験者やエンジニアなどの専門職採用が増加。これらの高度な経験やスキルを持つ人は希少であり、多くの企業から求められています。採用競争に勝つために高年収を提示する企業が増加した結果、多くの業種・職種で平均決定年収が上昇しました。
2025年度も労働力不足が一層深刻化する中、即戦力人材への需要はさらに高まり、採用競争が激化すると予想されます。こうしたトレンドを受け、決定年収の上昇は今後も継続する見通しです。

業種別 決定年収上昇幅ランキング(2023年度・2024年度比較)

2024年度の業種別平均決定年収額を前年度と比較し、その上昇幅をランキング化したところ、1位は「IT・通信」(前年度比+17万円)でした。2位は「旅行・宿泊・レジャー」(前年度比+15万円)、3位は「エネルギー(電力・ガス・石油・新エネルギー)」(前年度比+14万円)が続きました。ここからは上昇幅TOP10のうち、TOP3の業種から読み取れる市場の変化について、解説します。(図3.)



1位は即戦力採用の機運の高まる「IT・通信」で+17万円(2023年度 469万円→2024年度 486万円)。
「IT・通信」業界の平均決定年収が、2023年度の469万円から2024年度には486万円へと17万円アップし、上昇幅1位となりました。この背景には、即戦力人材への採用ニーズの高まりと、大手企業を中心とした賃上げの加速が挙げられます。
近年、IT人材不足を補うため、実務未経験者の育成を前提とした採用も見られましたが、2024年度は採用充足が進み、企業は再び即戦力エンジニアに注力。DXを推進する社内SE、データサイエンティスト、セキュリティエンジニアなど、専門性と希少性の高い人材の需要が旺盛です。さらに、大手企業では業務への生成AIの導入が加速したことで、大規模クラウド基盤を支えるデータセンターのインフラエンジニアの採用が増加。こうした高度なスキルを保有するエンジニアの採用ニーズの高まりが、市場全体の年収水準を引き上げ、決定年収の上昇につながったと考えられます。
2位は「旅行・宿泊・レジャー」で+15万円(2023年度 406万円→2024年度 421万円)。エンジニアや企画・管理職の採用割合増加が影響か
「旅行・宿泊・レジャー」業界の平均決定年収は2023年度の406万円から2024年度には421万円へと15万円上昇し、2位にランクイン。特に「旅行・旅行代理業」と「スポーツ・ヘルス関連施設」の領域での年収アップが目立ちました。
旅行業界では、2024年の円安による訪日外国人旅行客の急増と、日本人の国内旅行消費額が過去最高を記録※2したことが、市場回復の追い風に。これを受け、旅行予約サイトのUX/UI改善、新サービスの開発などを担うエンジニアの採用などが活発化したことが、平均決定年収の押し上げにつながったと考えられます。また、「スポーツ・ヘルス関連施設」では、フィットネスジムがコスト削減を目指した省人化と店舗拡大を加速。店舗システム開発のエンジニア、利用者拡大を担うマーケティング職、新規出店の立地調査を行う店舗開発といった職種で即戦力人材の採用が増加し、決定年収の上昇を牽引しました。
※2 観光庁「2024年旅行・観光消費動向調査」
3位は「エネルギー(電力・ガス・石油・新エネルギー)」で+14万円(2023年度 514万円→2024年度 528万円)。再生エネルギーや脱炭素をけん引する希少な人材の採用強化が背景に
「エネルギー(電力・ガス・石油・新エネルギー)」業界の平均決定年収は2023年度の514万円から2024年度には528万円へと14万円上昇し、3位にランクイン。政府のグリーン成長戦略やESG経営・SDGsの浸透を背景に、環境への配慮が企業の競争力に直結する時代が到来しています。また、エネルギーコストのリスク分散や社会的要請を受け、多くの企業が再生可能エネルギーへの投資を加速しています。
こうした状況から、電力・ガス・石油企業では、再生可能エネルギーや脱炭素に関する専門人材の確保が急務です。具体的には、太陽光・風力発電の新規事業をけん引するリーダーや、CO2排出量の可視化・脱炭素経営計画の策定を担うエキスパートの採用ニーズが高まっています。しかし、こうした専門人材は希少で他業界とも競合するため、企業は年収を引き上げて採用力を強化。さらに、外資系企業やスタートアップがジョブ型雇用でより高水準の年収を提示する動きも活発化し、決定年収の上昇を後押ししています。

職種別 決定年収上昇幅ランキング(2023年度・2024年度比較)

2024年度の職種別平均決定年収額を前年度と比較し、その上昇幅をランキング化したところ、1位は「技術職(組み込みソフトウェア)」(前年度比+15万円)でした。2位は「クリエイター・クリエイティブ職」(前年度比+14万円)、3位は「企画・管理」(前年度比+13万円)が続きました。ここからは上昇幅TOP10のうち、TOP3の職種から読み取れる市場の変化について、解説します(図4.)。



1位は「技術職(組み込みソフトウェア)」で+15万円(2023年度 524万円→2024年度 539万円)。希少な優秀人材を採用すべく、待遇改善に動く企業が増加したことが影響
「技術職(組み込みソフトウェア)」の平均決定年収は2023年度の524万円から2024年度には539万円へと15万円アップし、上昇幅1位となりました。2024年度は、電気自動車(EV)のバッテリーマネジメントシステム、AI搭載ドライブレコーダー、倉庫管理ロボットなど、組み込み技術の進化による開発スピードの高速化がより求められました。また、2024年度は防衛費の拡大を受け、航空機や潜水艦など防衛関連製品の開発・製造を強化する流れがみられました。結果、「技術職(組み込みソフトウェア)」の即戦力人材の重要性が増し、自動車、製造、防衛関連の企業が採用を強化。また、コンサルティング業界でも、ソフトウェア開発のコスト削減を目的に、組み込み技術のプロジェクトマネージャーの採用が拡大しています。

しかし、こうした専門人材は希少で、好待遇の現職にとどまる傾向が強いため、中途採用の難易度は極めて高い状況です。そのため、企業は給与体系の見直しや専用職位の新設に加え、リモートワーク対応や拠点拡大などはたらく環境の整備を進め、採用競争力を強化。結果的に、経験豊富なミドルシニア層の転職が増えたことも、平均決定年収の上昇に影響したとみています。
なお、2022年度から2023年度にかけても決定年収は14万円上昇※3、2年間で計29万円アップしていることからも優秀な「技術職(組み込みソフトウェア)」の採用意欲の高まりが伺えます。
※3「2023年度 職種版 決定年収レポート」https://www.persol-career.co.jp/newsroom/news/research/2024/20240612_1503/
2位は「クリエイター・クリエイティブ職」で+14万円(2023年度 430万円→2024年度 444万円)。フリーランスへの業務委託や生成AI活用が進み、正社員に求める業務のレベルアップが一因に
「クリエイター・クリエイティブ職」の平均決定年収は2023年度の430万円から2024年度には444万円へと14万円上昇し、2位にランクイン。年収アップの背景には、以下の2つの要因が挙げられます。
一つ目は、各工程におけるフリーランス人材の活用が進む一方で、正社員には上流の戦略立案やプロジェクトマネジメントといったスキルが求められるようになったことです。こうしたポータブルスキルを持つ優秀な人材の採用が増えたことで、決定年収がアップしたと考えます。もう一つは、生成AIの普及により、簡易なレイアウトやデザイン作成が自動化され、クリエイティブ職の役割が変化したことです。これにより、デザイン領域ではコンセプト設計、企画、ディレクションなどの戦略的スキルが求められ、映像制作では3Dモデリング、アニメーション、AR/VRコンテンツ制作など高度な専門性を有するクリエイターへの需要が増加。結果、決定年収が大幅に上昇したのではないでしょうか。
3位は「企画・管理」で+13万円(2023年度 504万円→2024年度 517万円)。ガバナンス強化や業務効率化、システム導入経験のある即戦力人材の採用強化が影響
「企画・管理」職の平均決定年収は2023年度の504万円から2024年度には517万円へと13万円上昇し、3位にランクイン。企業のコンプライアンス強化と法改正対応を背景に、専門性の高い人材への採用ニーズが高まったことが決定年収アップを牽引しました。
近年、SNSを起点とするコンプライアンス違反や不正問題の炎上が経営リスクとなることから、企業はガバナンス強化に注力しています。特に2024年度は、給与水準の高い大手企業を中心に、「総務」や「法務」の採用が活発化。リスク管理や社内統治を担う即戦力人材へのニーズが高まり、平均決定年収を押し上げました。一方、「経理」では、2024年度の監査統制基準の改定により監査業務の負荷が増加。さらに、電子帳簿保存法やインボイス制度など、数年で会計関連法改正が重なり、業務効率化やシステム導入のスキルが求められるようになりました。これにより、経理職の専門性と市場価値が向上し、「企画・管理」の平均決定年収が上昇したと考えられます。

解説者プロフィール doda編集長 桜井 貴史 (さくらい たかふみ)新卒で大手人材会社に入社し、一貫して国内外のキャリア教育や就職・転職、企業の採用支援に従事。2016年、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に中途入社し、株式会社ベネッセホールディングスとの合弁会社、株式会社ベネッセi-キャリアにて、新卒オファーサービス「dodaキャンパス」の立ち上げを牽引、初代編集長を務める。キャリア講座やアセスメントなど大学生向けサービスの責任者としても、事業の拡大に貢献。その後、パーソルキャリアに帰任し、2023年よりプロダクト統括部エグゼクティブマネジャーとして法人向けプロダクトを管掌。また同年よりdoda副編集長を務め、2024年4月にdoda編集長に就任。Z世代の就職・転職動向やキャリア形成、企業の採用・育成手法に精通。社会保険労務士有資格者でもあり、労働市場・法制の動向にも詳しい。






調査概要
対象:2019年4月~2024年3月の期間に転職サービス「doda」のエージェントサービスを利用し転職した個人
雇用形態:正社員

転職サービス「doda」について< https://doda.jp/
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