■社会の上層部にいる「フランス系」とカルロス・ゴーン

 また、こうしたグループの中にも、更なる細分化があるのが、モザイク社会・レバノン。この国の社会的上層部にいる人たちの「種族」の一つとして、「フランス系」というグループが存在する。血統上のフランス系だけでなく、両親がレバノン人ながらも、裕福な家庭の子供はフランスで教育を受け、祖国との繋がりを保ち続けながらも、世界で活躍する人材も多い。ゲンマイゼというベイルート西部のキリスト教徒地区にある、カイヤンというバーでは、平日の夜から上質のレバノンワインを嗜む、こうしたフランス系が集まる。

 

 日本でもよく知られるこの層の例としては、カルロス・ゴーン氏もその一人だ。ゴーン氏の場合は、シャルル・ドゴール元フランス大統領他、多くの著名人が卒業生として名を連ねる、パリ6区にある私立スタニスラス校(Collège Stanislas)で学んだ。

 日本のメディアでも取り上げられたが、レバノンではゴーン氏の逮捕及びその後の対応について、批判的な見方が強い。レバノン出身者が世界で大きな成功を収めているということで、ここでは氏の名前は、ポジティブな意味で多くの人々に知られる。日産の企業として資産と自分の財産の線引きでトラブルとなったゴーン氏だが、皮肉なことに、氏はレバノン内の学校に多くの資金を寄付していることでも知られる。

 国際的なバックグランドを持ちながら、レバノン人としてのアイデンティティを忘れずに、海外の成功で得た富を、自国の子供達の教育へ還元。長年、こうした目線で氏を見てきたレバノン国民たちは、背信行為により逮捕され、留置所に拘束され、取り調べを受けている氏への扱い対して、当然批判的な見方をする。

 それは、バクシーシが必要悪として事実上黙認されるような社会であれば、尚更だろう。