■何よりも正直さ故。

 21世紀のモスクワで、若い世代に今でも語られる「古いロシア」の姿。英語を流暢に話し、簡単なフランス語も話せ、文化的感覚と教養も持つアリーナさんに、少し踏み込んで「スラブ的価値観」について聞いてみた。

「とにかくロシア人は、正直でダイレクトなのです。私達から見れば、いつもにこにこ笑っている人や、誰にでも礼儀正しくする日本人など、一体何を考えているのか分かりません。誰にでも愛想よく接する人は、相手の事を好きなのか、嫌いなのか、或いは普通なのかを、正直に相手に伝えない人たちだと思います。

 私達ロシア人は、嫌いな人には面と向かってひどい言葉を言うこともありますし、疲れている時には愛想笑いなどせずに、正直に疲れた顔を見せます。その代わり、好きな人と話している時や、機嫌のいい時に会う人たちには、正直にいい笑顔を見せます。少なくとも、正直でいることに価値観を見出すのが、スラブ的な価値観だと思います」

 この日の仕事を終え、筆者の友人も交えて一緒にロシア名物のフルーツ・ティー(ベリー類のジュースを温めたような飲み物)を飲むアリーナさんの笑顔は、何とも言えない程に温かかった。