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ヤクザは暴力を背景にするが、決して使いはしない。

向谷匡史氏インタビュー①

■相撲のタニマチを当たり、ヤクザに行き当たる

――今回の書籍にも登場しますヤクザへの取材もその頃に?

 昭和50年代の初め頃だったと思いますが、週刊ポストで相撲の八百長キャンペーンを展開していまして、かなり大きな事件だったので、私も取材要員として駆り出されました。相撲のタニマチを当たっていくと、最終的にはヤクザに行き当たるんですね。そのあたりから少しずつ繋がりができたというか、その世界を知るようになりました。

 非常に面白かったですよね。向こうも当然、私たちメディアに対して一目を置くんですよ。なぜかというと彼らは人気商売だから、悪くは書かれたくない。業界の人間が読むので、けなされたくはないんですね。

 向こうは多少プレッシャーをかけつつ、話を膨らませながらインタビューに答える。こちらはあくまで書き手としてのスタンスを崩さない。この一線を超えたらアウトなんですよ。なまじヤクザの世界を知っているからと話を合わせたり、親しくなってあちらの世界に足を踏み入れるとロクなことはない。記者という立場を崩さずに付き合っていました。

――そういう世界に触れてどのように感じましたか?

 学んだことはたくさんあります。私の本にもよく書くのですが、ヤクザというのはご存知のように暴力を背景にしている。それは、あくまで背景であって売り物ではないんですね。暴力は自分の武器ですが、それを使うと懲役に行かなくてはいけないからアウト。自分の一番の武器を使わずにして、どう使うかというのが彼らの技術なんです。だから脅したり、心理的駆け引きがうまい。そこは大したものでしたね。

〈第2回に続く〉

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向谷 匡史

むかいだに ただし

 1950年生まれ。広島県呉市出身。広島県立呉宮原高校、拓殖大学政経学部卒業。大学在学中からフリーライターとして活動を始め、卒業後、「週刊ポスト」専属記者となる。事件、スポーツ、芸能記事のほか、対談、人物記事をシリーズを担当する。



 その後、編集企画会社を設立。各種パンフレット、会報等の制作から雑誌の取材記事、単行本の執筆編集まで幅広く活動。

 作家に転向後、単行本の執筆のほか、「漫画ゴラク」「漫画サンデー」「週刊アクション」等で劇画原作を手がける。



 2000年11月、保護司拝命。2006年5月、浄土真宗本願寺派(西本願寺)で得度。2013年4月、同派で「教師」取得。空手道「昇空館」館長としての顔を持つ。異色の作家であり僧侶として知られる。



 執筆ジャンルは仏教から人間関係術、さらにヤクザの心理術まで多岐にわたり、人間社会を鋭くとらえた観察眼と切れ味のよい語り口に定評がある。


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