蒼空の「ヘヴィー級剣闘士」、双発戦闘機列伝 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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蒼空の「ヘヴィー級剣闘士」、双発戦闘機列伝

技術力で明暗が分かれたその栄光と凋落

■多くの優位点

 しかも、双発戦闘機には他にも有利な点がいくつかあった。

 例えば、コックピット前面に設けられた照準器で機銃や機関砲といった火器の狙いをつけるには、照準器から延びる照準線と弾道がともに真っ直ぐな直線のほうが有利だ。しかし単発戦闘機の場合、照準線と弾道の直線化が可能な機首にエンジンとプロペラが搭載されているので、わずかな数の、それも口径の小さな機銃しか設置できず、さらに多くの火器を積もうとしたら主翼に装備せざるを得ない。そしてこの場合、左右の主翼の機銃からの弾道の交差点を照準線上の前方の一定の距離に設けておき、その距離で敵機を照準器に捉えることで命中弾が得られるように調整されている。

 だが双発戦闘機では、機首にエンジンもプロペラもないため火器を集中して装備でき、しかも機首部分は主翼よりも強度があり搭載空間も広いので、大口径の機関砲の設置も難しくない。そのうえ主翼内に比べて弾薬も多く搭載でき、射撃によって弾薬が消費された際の飛行バランスの変化も、主翼に火器を積んだ場合に比べて少なくて済む。

 また、エンジンを2基備えているので単発戦闘機よりもペイロードが大きく、機銃や機関砲のような空対空兵装に加えて爆弾やロケット弾のような空対地兵装も、より多く搭載可能だった。

 かような次第で、一見では有利な点ばかりに目が向く双発戦闘機であり、ゆえに1930年代の列強は、こぞって双発戦闘機を開発・実用化した。ところが第二次世界大戦が勃発して実戦に参加すると、その弱点を露呈した機種も出てくることになる。これについては、以降の本連載でおいおいお話して行くことにしたい。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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