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【隔週木曜日更新】連載「母への詫び状」第二十四回

■「ドラゴンクエスト」の転職の神殿

連載「母への詫び状」第二十四回〉

 

 介護離職やミッシングワーカーについて考えていたら、これは「ドラゴンクエスト」の転職の神殿に似ているのではないかと、ふと思いついた。

 以下、ドラクエを知らない人にはまったくわからない話が続くが、そこは気にせず進めたい。ドラゴンクエストのシリーズの中でも転職のシステムはいろいろ異なり、思い描いているのは「ドラクエ3」だ。

 ドラクエ3では、ゲーム中のキャラクターに「武闘家」「魔法使い」などの職業があり、途中で「転職の神殿」に行くとこれらの職業をチェンジすることができる。ただし、転職すると、それまでのステータス(経験を積み重ねて得た各種の能力値)が半分になるというデメリットもある。

 転職の中でも、最強とされるのが「賢者」へのジョブチェンジだ。賢者は僧侶と魔法使いの両方の能力を備えたスペシャルな職業で、これは「打者・大谷翔平」と「投手・大谷翔平」が合体するくらいの価値がある。その分、転職のための条件は厳しい。

「悟りの書」というレアなアイテムを持った者だけが賢者になることができ、この悟りの書は、敵がうじゃうじゃ出る某所で、ある行動をとらないとたどり着けない場所にしかない。

 介護生活は「悟りの書」を手にするための戦いであり、時に理不尽な修行でもある。

 もしかしたら真っ暗な塔や、迷路のような洞窟の中で、ゲームオーバーになるかも知れない。宝箱を見つけたと思って、開けてみたら「人食い箱」で、あっというまに人生が詰んでしまうかも知れない。

 そうやって、もがきながら右往左往して、苦しいときは仲間の「トクヨウ!」とか「ホジョキン!」などの呪文に助けてもらい、それでも悟りの書は見つからず、ああ、もうあきらめた、ここで手を離してしまおうかと、そんな瞬間に光が見える。

 無事に戦いを終え、悟りの書を手に入れてダンジョンを出た者には、賢者に転職する資格が与えられる。本当に賢者になれるなら、それまで積み重ねた仕事のステータスが半分になるくらいは、仕方のない代償だ。

 しかし、転職の神殿へ行ってみると、自分とは違う道をたどって賢者になる資格を得た者がいることを知る。

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夕暮 二郎

ゆうぐれ じろう

昭和37年生まれ。花火で有名な新潟県長岡市に育つ。フリーの編集者兼ライターとして活動し、両親の病気を受けて帰郷。6年間の介護生活を経験する。



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