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ソ連の秘密工作機関「ウェア・グループ」の目的

戦争勢力の暗躍と、乗っ取られたホワイトハウス シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑪(最終回)

 ちなみに「雪作戦」を行った財務官僚のハリー・デクスター・ホワイトも、モーゲンソー財務長官への影響力を使って工作員を何人も入省させました。エヴァンズらは、序章で触れた元共産党員エリザベス・ベントレーの証言に基づいて、一九三〇年代半ばまでに財務省への浸透がかなり進み、常に新人が送り込まれる状態になっていたと指摘しています。ベントレーが名指しした財務省内工作員は十数人いました。

 一九四一年十二月、アメリカが第二次世界大戦に参戦すると、さらに浸透が本格化しました。それには三つ理由があります。

一、米ソが対独戦争の同盟国同士になったこと。

二、ソ連が同盟国になったことを理由として、それまで共産党員を政府職員として雇うことを禁じていた法的な安全装置が外されたこと。

三、戦略諜報局(OSS)、戦時生産委員会(WPB)、戦争情報局(OWI)など戦争遂行のために新設された機関が受け皿になったこと。

 世界最大の共産主義国であるソ連は今や我々の同盟国なのだから、軍や政府の公職から共産主義者を排除するべきではないという理屈で、むしろ積極的に共産主義者を公務員として雇うようになりました。

 それまでは公務員を採用する際に、共産党員であるかどうかだけでなく、さまざまな共産党のフロント団体に加入しているかどうかもチェックしていたのですが、就職希望者にそういう質問をすること自体してはいけないことになりました。

「あなたは共産党員ですか」と聞いてはいけないし、フロント団体の名前を挙げて「あなたはそこのメンバーですか」と聞いてもいけない。要するにノーチェックで共産主義者が入り放題になったのです。

 もはやあらゆる省庁に共産党員が多かれ少なかれ浸透している状態でしたが、当時重要な省庁だった農務省、金を握る財務省や予算局、対外政策に関わる国務省、外国経済局、WPB、OSS、OWIなどには特に集中的に浸透していました。

 OSSは戦争中に設立された情報機関で、他の省庁から「公平で正確な情報源」として頼られていました。情報機関としての性質上、任務の機密性が高かったために当時は実態が知られていませんでしたが、現在では共産主義者による浸透ぶりが明らかになっています。ウィリアム・ドノバンOSS長官の副官の筆頭格はダンカン・リーという工作員で、ドノバン長官宛に来る機密書類をすべて読むことができる立場でした。

 小著『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(前掲)で指摘したように、このOSSの日本部門が、いわゆる東京裁判、神道を弾圧する神道指令、憲法改正、教育制度の改悪、在日朝鮮人と部落解放同盟による国内対立の扇動といった戦後の対日占領政策を作っています。その責任者がダンカン・リーでした。

バージニア州マクレーンにある現在の中央情報局(CIA)本部

 ちなみに戦後、このOSSを母体として作られた対外インテリジェンス機関がCIAです。アメリカの対外インテリジェンス機関であるCIAが、もともとソ連の工作員の巣であったことは覚えておくべきでしょう。

 当時、アメリカ国民の大半は知りませんでしたが、日本が戦ったルーズヴェルト政権は事実上、ルーズヴェルト民主党・共産党連立政権であったのです

(『日本は誰と戦ったのか』より構成)

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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