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ソ連による「雪作戦」の日米開戦への影響度は? 専門家による様々な評価

「雪作戦」に対するいくつかの評価 シリーズ!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑧(最終回)

 このように日米の専門家は、雪作戦が日米開戦の「最大の原因」ではないものの、「一つの要因であった」ことは認めています。「ソ連の工作によって日米戦争が起こされたとするソ連陰謀説は、パブロフの証言を見るかぎり、まったく当たっていない」とする須藤氏の見解は明らかに行き過ぎです。須藤氏はなぜ、ソ連による対米工作の影響をあえて過小評価しようとしたのでしょうか。
 少なくともソ連側にとって雪作戦は、日本を日米開戦へと追い込むために計画されたものでした。『ヴェノナの秘密(The Venona Secrets)』は、パブロフの著書の記述を英訳・引用しつつ、次のように述べています(引用者の私訳)。

 ホワイトとの面談の直後、パブロフはコード名「クリム」を使って「すべて計画通りで異常なし」とモスクワに報告した。
 そして、ゾルゲが「日本は一九四一年、ソ連ではなくアメリカと戦うと決定した」と報告したにもかかわらず、パブロフは後年、「日本がソ連を背後から攻撃する可能性が残っていた。アメリカの(日本との)開戦によってその脅威が消滅したのであるから、そのような確証を得るために取られたあらゆる行動は我々の利益にかなうものだった」と回顧している。(『ヴェノナの秘密』p.44, ( )内は引用者)

 つまりパブロフは、日米戦争を欲していたのです。日本が南進論に決めただけでは不足であり、日米戦争が始まってやっと確実にソ連の安全が確保できたと回顧しているのです。

日本への宣戦布告の署名を行うフランクリン・ルーズベルト

 ジョン・コスターの『雪作戦(Operation Snow)』は、「軍備の大半をアメリカに売り渡せという要求を日本政府が認めれば国内で反乱が起きるに決まっているので、日本は絶対に受け入れるはずがなかった」と述べています。
 雪作戦が日本を日米開戦へと追い込むために計画されたものであり、実際に日本は、この雪作戦によって生まれたモーゲンソー私案に基づくハル・ノートを契機に日米開戦を決断したのです。
 にもかかわらず、須藤氏は雪作戦を過小評価し、パブロフ氏を擁護し、ソ連の対米工作は大した効果がなかったような印象を読者に与えようとしているように見えます。それは誤解でしょうか。

 実は日米和平交渉を妨害し、日米戦争へと誘導しようとしたソ連の工作は、この雪作戦だけではありませんでした。
 アメリカのホワイトハウスと中国国民党の蔣介石政権とを結ぶ外交ルートにおいても、ソ連の政治工作があったのです

(『日本は誰と戦ったのか』より構成)

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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