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「日米開戦をなんとしても…」アメリカには開戦“回避”派がいた

アメリカには日米和平の実現を模索する人もいた!日本人のためのインテリジェンス・ヒストリー⑤

満洲事変、シナ事変と中国大陸を巡って日米両国が対立し、ついに日米戦争に発展してしまった――。こういった歴史観には致命的な欠陥がある。日米開戦を引き金を引いたのはソ連だ。アメリカ側には日米戦争回避派が多くいた。江崎 道朗氏は著書『日本は誰と戦ったのか』 の中でこう記す。

■アメリカ陸海軍のトップは日米開戦に反対だった

 ルーズヴェルト民主党政権は一九三九年七月に日米通商航海条約の廃棄通告を行い、一九四〇年九月の屑鉄【くずてつ】の禁輸に始まって、次々と禁輸品目を増やしていきました。

 そしてついに四一年七月、日本の在米資産凍結を行い、八月には石油対日全面禁輸に及びます。

 資産凍結と石油禁輸が日本にとって極めて厳しい制裁であったことはすでに述べました。アメリカの戦略家たちは、このような厳しい制裁の影響は、日本の軍事力だけでなく経済へも重大であり、日本からアメリカへの開戦事由になりかねないことがわかっていました。

 開戦事由とは、「日本のアメリカに対する戦争を正当化できる理由」という意味です。アメリカがあまりに厳しく日本に経済制裁すると、日本としてはそれを理由にしてアメリカに宣戦することが国際法上正当だと主張できることになるのです。

 国際社会では、一九二八年にアメリカとフランスが主導してパリ不戦条約が締結されていました。日本も署名したこの条約では「自衛戦争」を認める一方で、「侵略戦争(aggression)」を違法化することを謳【うた】っています。

その際、「侵略戦争」についての厳密な定義は確立されませんでしたが、基本的には「挑発を受けずに先制攻撃を実施すること」という意味合いで合意しています。そしてこの「挑発」の中には「経済制裁」も含めることが可能でした。

 
 

日米開戦に反対だったジョージ・マーシャル

 このため、アメリカ政府としては、対日経済制裁を強化すると、それを理由に日本が「自衛戦争」をしてくる恐れがあることを理解していたのです。

 アメリカ政府、外交当局や財務省がこのように対日経済制裁をエスカレートする一方で、このままでは日米衝突が避けられないことを憂い、日米の軍事的対決を避けるために、日米和平の実現を模索する人びともいました。

 その筆頭が軍人でした。

 日米和平を特に望んでいた人物として、『スターリンの秘密工作員』(p.93)は、ジョージ・マーシャル陸軍参謀総長とハロルド・スターク海軍作戦部長を挙げています。

日米開戦に反対だったハロルド・スターク

 海軍作戦部長とはアメリカ海軍省の最高位ですから、要するに陸海軍のトップが日米開戦に反対だったのです。スタークはホワイトハウスに対して、「戦争の準備はできていない」と進言していたほどです。

 一九四一年十一月の時点ではまだ、アメリカ軍は平時体制でした。

 アメリカでは連邦議会が一九四一年三月に武器貸与法を制定して、イギリスを中心とする連合国への軍事援助を始めていましたが、世論は、アメリカがヨーロッパの第二次世界大戦に武力介入することには反対で、参戦の準備はできていませんでした。選抜訓練徴兵法が前年に制定されたばかりで兵員の数も足りず、装備も全く整っていなかったのです。

『ヴェノナの秘密(The Venona Secrets)』(p.43)は、「いずれアメリカの参戦は避けられないと認識していた政策立案者たちもいたけれども、彼らの誰一人、日本との戦争に直ちに突入したいと思ってはいなかった」と述べています。

 日米戦争回避派の主な人物としては、軍人の他に、ジョゼフ・グルー駐日大使がいました。

「強い日本がアジアを安定させる」という考え方の「ストロング・ジャパン派」の代表のような外交官です。グルーは、日米関係打開のため近衛首相とルーズヴェルト大統領との会談開催に向けて動いていました。グルーを通じて、近衛首相が日米の妥協を強く望んでいることもワシントンに伝えられていました。

 こうして一九四一年十一月、アメリカ政府内で、九〇日間の暫定協定構想が浮上します。

(『日本は誰と戦ったのか』より構成)

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江崎 道朗

えざき みちお

評論家。専門は安全保障、インテリジェンス、近現代史研究。



1962年生まれ。九州大学卒業後、月刊誌編集、団体職員、国会議員政策スタッフなどを経て、2016年夏から本格的に評論活動を開始。月刊正論、月刊WiLL、月刊Voice、日刊SPA!などに論文多数。



著書に『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)、『アメリカ側から見た東京裁判史観の虚妄』(祥伝社新書)、『マスコミが報じないトランプ台頭の秘密』(青林堂)、『コミンテルンとルーズヴェルトの時限爆弾』(展転社)ほか多数。



 


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