野宿女子が問う、クリーン社会の代償 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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野宿女子が問う、クリーン社会の代償

現在観測 第18回

天敵は「最悪いす」

 わたしがすっかり野宿にハマったのは17歳の夏(なんとなくよい響きであります)。
 一か月半ほど本州を徒歩で縦断する野宿旅行をして、あちこちで眠る楽しさに目覚めたのですが、当時は列車が通っているところではなるべく路線に沿って歩き、夜は無人駅の駅舎にお世話になっていました。雨風がしのげて、水場とトイレ、駅前には商店がある。そんなスバラシイ駅に「駅よ、ありがとう!」と思い募らせ、「駅のいすって色々あるんだな」としみじみ体感。その夜のベッドになるため、寝心地に直結するいすが重要だったからです。
 いすのタイプは、ざっくり分けると3つ。タイプ1:待合室の壁にコの字型やL字型につくりつけられた長いす、タイプ2:4人掛けくらいの大きさのいす(それぞれ木製とプラスチック製のものがあって、木製の方が寝心地がイケてます)、それからタイプ3:プラスチック製の一人用のいすがいくつも並んでいるものです。

タイプ1:L字型長いす。

タイプ2:4人掛けくらいのいす。これは木製です。

タイプ3:一人用のいすが複数並んでいるもの。北海道のどこかの駅。座布団が置いてあるのでここなら寝られると思います。

勝手に命名「最高いす」。会津鉄道の某駅。スバラシイです。

 一人用のいすは、ひじ掛けがないものは寝ようと思えば寝られますが、ひじ掛けが付くときびしく、これは巷(おもに駅寝愛好者の間)で「最悪イス」と呼ばれています。

最新「最悪いす」。2016年1月に撮ったものです。茨城の水郡線の駅にあったもの。

青森のどこかの駅の待合室。最近この、ひじ掛けがテーブルっぽくなっているのもよくあります。

 わたしが10代の頃はひじ掛けがないものが多く、付いているものに出くわした記憶はありません。しかし駅舎の立て替えに伴って勢力を拡大していったようで、いまではかなりの確率で、このひじ掛け付きを目にします。

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かとう ちあき

1980年神奈川県生まれ。法政大学社会学部卒。在学中、就職活動はせずに旅を続けることを決意。現在もちょこちょこ旅に出かける。2004年、旅ミニコミ誌『野宿野郎』を創刊、編集長にして発行人を務める。が、2010年に第7号を刊行して以来、次は出ていない。著書に『野宿入門―ちょっと自由になる生き方』(草思社文庫)、『野宿もん』(徳間書店)、『あたらしい野宿(上)』(亜紀書房)、『バスに乗ってどこまでも 安くても楽しい旅のすすめ』(双葉社)がある。野宿野郎web http://nojukuyaro.net/


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