プラドの看板作家の作品が異例の数で日本に上陸

 2016年7月にル・コルビュジエの建築作品の一つとして世界遺産に登録された国立西洋美術館(以下、西美)。国立では唯一の西洋美術全般を対象とする機関だ。

 2月24日(土)からは本邦5回目となる人気企画「プラド美術館展」が開催されている。西美の主任研究員・川瀬佑介さんに共催者から開催の打診があったのは約3年前のこと。
「プラド美術館の看板作家であるベラスケスをできればメインにしたいという意向でまとまりました」。
 ディエゴ・ベラスケスは17世紀スペインで活躍し、マネやピカソなどにも影響を与えた画家。スペインのプラド美術館は、ベラスケス作品の半数近くを所蔵するも、その重要性からまとまった数で貸出することは稀。そんな中、今回は交渉の末、重要作7点が出品されることが決まった。
「共催者がプラドと良好な関係を築いてきたおかげです。こちらの要望が受け入れられ、5回目にしてようやくベラスケスを展覧会のタイトルに入れられるような企画が実現しました」。

 出品リストが決まると図録の制作に入る。海外の美術品を多く扱う展覧会では貸出する美術館の意向によって進め方も変わる。「ワンレンダー(作品貸出者がひとつ)の場合、向こうの美術館が全部書くということもあります。それも悪くはないのですが、日本の展覧会で日本のお客様に何を見てもらいたか。その感覚的なところは日本側の人間の方がよくわかっています。プラド美術館は日本にも出品作について書ける人が多くいることを知っているので、今回はかなりの部分を日本側で書かせてもらいました」。 
 研究員自らを含め、外部の専門家や翻訳家10人以上で執筆。その振り分けを決めるのも研究員だ。

 意外だったのは会場に設置される作品解説パネルの文言。図録に掲載された原稿を要約したものだと思っていたが、わざわざパネル用に書き直すことも多いという。
「本で読む解説と実際に作品を前にしたときに読む文章は性格が違います。せっかく実物が目の前にあるのですから、そこに何が描いてあって、なんでこの絵が面白いのか。何を見たらいいのかを伝えないといけない。気づきにくいディテール説明や『へぇ〜』と思えるネタも入れます。それらは図録の作品解説で触れない要素かもしれないですが、実物を見たときの満足感に繋がると思っています」。
 展覧会に来場するのは必ずしも美術愛好家ばかりではない。美術の知識がなくても楽しんでほしい。そんな細やかな配慮が「プラド美術館展」を支えている。

雑誌『一個人』2018年3月号より構成〉