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井口資仁、ホワイトソックス時代に「未熟さ」を指摘された技術とは

井口資仁監督に聞く。Q8.日米でプレーされて感じる「野球技術」の差はなんでしょうか?

「BEST T!MES」連載30問30答、2018年最初に登場するのは2017年の雪辱を期す千葉ロッテマリーンズの新監督・井口資仁氏。日米でプレーし感じた「技術」の差とは?

日本人の持つ「基本」は何のためのものか

 一番差があるのは、内野手の守備力でしょうね。現在、メジャーリーグでプレーしている日本人選手のポジションを見てみても、その傾向は明らかです。

 メジャーリーガー……、特に中南米出身選手たちとは、育ってきた環境に違いがあると思います。彼らは子供のころから常にボコボコのグラウンドでプレーしています。対して日本の選手たちは整備されたグラウンドでプレーするのが当たり前。特に最近は、プロはもちろんアマチュアも人工芝のグラウンドで試合や練習をすることが多い。楽をしてフィールディングすることに慣れてしまっているんです。

 そういう環境の違いが、グラブのハンドリングや、打球に対する1歩目の反応という技術の違いを生んでいるのではないでしょうか。

 プロ野球ファンの中には、「日本人は器用なので、外国人選手にパワーでは負けても技術では勝る」というイメージを持っている方が多いのかもしれませんが、内野手の守備に関しては、技術でも負けてしまっているのが現状だと思います。

 その技術の差を生むもう一つの要因として、「意識の違い」も上げられると思います。

 日本人選手は型通りにプレーすることは得意です。しっかり捕球して、しっかり送球する。そういう基本の部分では優れている。
 でも、応用の部分では、米国や中南米の選手たちの方が勝っているように思います。彼らは「しっかり捕球する」のではなく、「どうやって打者をアウトにするか」という意識で守備をしている。「まず捕球、次に送球」という考えではなく、最初からアウトにできるための動作を作り上げる、という指導を受けてきているんです。
 つまり「アウト」にするために選択したプレーが、「基本」とは異なる形であることが多いわけです。

 例えば、一塁でアウトにできるか、セーフになってしまうかギリギリの打球に対しても、日本球界では、きちんと捕球してきちんとステップして送球する守備を良しとする傾向にあります。それでセーフになったとしても、基本に従ってベストを尽くしたのだから仕方ない、という考え方です。しかし、僕はそれではダメだと思います。だって、ベストを出しても足りないーーアウトにならなかったら、いつまで経ってもアウトにできないじゃないですか。そういう時は、違う方法でのチャレンジが必要なのです。

 

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井口 資仁

いぐち ただひと

1974年12月4日生まれ。東京都田無市(現:西東京市)出身。千葉ロッテマリーンズ監督。97年逆指名で福岡ダイエーホークス(現:ソフトバンクホークス)に入団。走攻守三拍子揃った選手としてレギュラーとして活躍する。2005年にはシカゴホワイトソックスに入団。ワールドチャンピオンに二度輝く。その後、09年に千葉ロッテで日本復帰。昨年現役引退を発表。


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