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【創造への信念】自分に力がないと思っている人たちへ「できる」を証明したい(トラストバンク会長兼ファウンダー・須永珠代)

創造への信念「課題解決先進国」リーダーの条件

写真:西田幸樹

■ヒト・モノ・カネ・情報の好循環で劇的に人が変わる!

 ヒト・モノ・カネ・情報の循環を好くする目的で始めた「ふるさとチョイス」でしたが、「自分たちには何もできない」という思考の壁に対してモノとお金が動き出したときに人が劇的に変わっていったことが見えたことも確かでした。
 例えば、返礼品を提供する企業と自治体という「点」を私たちがつないだ瞬間から、つぎつぎと自然に「線」となり、また「面」となっていったのです。
 その地域の人たちの顔つきが「自信」へと変わったのです。
 自信を持つといろんなことを突破し出しました。これは絶対に議会に通らないって言われていた案件を通したり、絶対にできないと言われていた企画をどんどん突破して実現する。その様子を見て地域の人たちに実力がないのではなく、本当は「きっかけ」さえあれば、どんどん自分たちの限界を超えることができるのだと実感しました。

「ふるさと納税」だけで彼ら自身が自分や立場、議会、首長の壁を突破していくのを見て、このエネルギーを他の領域にも波及できるはずだと思ったわけです。大本は、人々の思考、考え方が変わっただけなのです。私は点と点を「ふるさと納税」というツールを通してつなげてきただけなのです。
 そうすると、災害時の寄付を取り組もうと思ったときも、その「点と点同士」が自然と協力しながら結びついていきました。
 例えば、災害支援としての「代理寄付」などは地域同士のネットワークが自発的に働いたものであり、いまでは、寄付文化として私たちの生活に根ざしたといっていいかもしれません(下段【*取材メモ】参照)
 例えば2016年の熊本地震における茨城県境町が行なった「代理寄付」は前例のないものでした。困っている人に寄付をしたい人々が多く、そうした人々の思いやりと底力に感動した思いです。


【*取材メモ】
 寄付文化を日本社会に根づかせたいという須永氏の思いは、地域課題解決のための自立支援活動を通じて確かなものと結実していく。「ふるさとチョイス」では、とくに未来の社会を担う若者たちへの経済的支援を、社会にとって「必要な」ものとして捉え、様々な取り組みを行っている。 
 例えば、コロナ禍で生活が困窮する遺児達が安心して年を越せるよう、あしなが育英会の「年越しの緊急支援金」に賛同し、今月(2020年12月)の寄付月間に合わせて、「ふるさとチョイス」を通じていただいた寄付1件につき、トラストバンクから10円(上限1,000万円)を、あしなが育英会に寄付をさせていただく取り組みを実施。今月25日(12月25日)に、1,000万円を寄付した。
 須永氏は「新型コロナウイルスによって生活がより一層厳しくなっている遺児やそのご家族が安心して年を越せることを願い、その声を広く届けるお手伝いをしたい」と語った。そして、寄付文化の醸成と社会課題解決を大切なテーマとして取り組んでいく考えを示した。

■小さくても踏み出す一歩地元の食堂で地産地消

 現在、このコロナ禍で都市と地方など本当に二極化が加速化され、例えば、貧困格差問題などを「つなげる」ことがまさに喫緊の課題だと感じています。
 例えば、1%でも地元でお金を使うことで乗数効果が働き、モノとお金の循環が好くなり地方の地産地消で持続的な発展を継続すると専門家の方が言われています。かたや2040年には800を超える自治体が消滅する危機だとも叫ばれています。
 でも、例えば、現在より人口が半分以下の江戸時代はどうだったんでしょうか? 幕末に260を超える藩があったと言われます。明治維新から150年以上過ぎた現在でもそうした地方は消滅していません。地域内の経済が回っていたからです。
 ならば、この二つの問題を「つなげ」て解決することはできないでしょうか。
地域の人がネットで商品を買うことから地元の商店街で意識的に買ってみる。
地元の商品に携わる人たちにお金が回転していきます。例えば地域の農作物なら、つくる人、販売する人、そして消費者がそのサービスの恩恵を得ます。地方創生とはこうした小さい一歩からです。
 ただ一つ言えるのは、自分たちこそ地域を変えることができるとする思考、考え方と行動が大事だと思うのです。

 

■自分に「なぜ…」と問い続け考え抜くことが大切です

 読者のみなさんに、何か新しいことを始めて問題で行き詰ったときに思い出してほしいことがあります。
 考えることと悩むということは違うということです。
 これは自戒をこめて言うのですが、普段私たちが考えていると思っていることの多くは悩んでいる状態です。目の前の一つの問題の前でなんどもぐるぐる考え行き詰まってしまう。
 じつは考えることはむずかしいのです。解決策、すなわち思考を具体的な行動にして問題を解決することが「考える」という意味になります。
 私自身が行ってきたのは、つねに自分のアイデアに対する問題に「なぜ」をつきつけ、「書きながら」解決策を見出しました。
 さらにその解決策へ再び「なぜ」を問い続けると、例えばAとBかの選択で迷う時、ふとCという「第三の選択肢」があることに気づいたりしました。  
 この「なぜ」と問い続けることが「考えぬく」ことであり、この知的体験こそみなさんがときに爆発的な問題解決力を生み出すきっかけになると思います。

 

◉須永珠代(すなが・たまよ)
トラストバンク会長兼ファウンダー
群馬県出身。大学卒業後、派遣社員やITベンチャー勤務を経て2012年4月にトラストバンクを起業。同年9月、全国初のふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」を開設。全国1788のすべての自治体のふるさと納税の「使い道」など掲載。同サイトで直接寄付の申し込みからクレジットカード決済までできる自治体数は約1600に上る。ふるさと納税を通したクラウドファンディングや災害支援の仕組みを提供するなど地域を支援するさまざまな事業を手がける。
15年12月、日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2016」大賞を受賞。19年、「ガバメントクラウドファンディング®」で「2019年度グッドデザイン賞」を受賞。
20年1月、同社会長兼ファウンダーに就任。著書に『1000億円ブームを生んだ 考えぬく力』(日経BP)がある。

(『一個人』2021年冬号より再構成)

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  • 須永珠代
  • 2016.05.21