「夏の福島の決勝よりも緊張した」

「今年のチームは慣れていない展開。同点にされた時、ベンチの雰囲気はよくなかったからね。勝ちを意識しても、優勝は転がってこない。だから『勝負事から気持ちを切り離して、仕切り直そう。一瞬を大事にしよう』と、選手たちに話はした」

 仕切り直し、一瞬を大事に。その最たる例が、8回に飛び出た須田優真の決勝アーチだ。
 カウント1-1からの3球目を一塁ファウルゾーンに打ち上げてしまうが、これを相手一塁手が目測を誤り捕球できず。肝を冷やしたが

「あそこで切り替えて、大胆にいけました」

と須田は冷静だった。その後、内角の厳しいストレートを、右腕をたたんでボールを押し込み、腰をぐるりと回転させて打球を放つ。レフトスタンドのポール際への本塁打。まさに、仕切り直しと一瞬を大事にしたことで生まれた一発だった。

 野手が粘れば投手も踏ん張る。呼応。そんな言葉が似あう試合運びだった。準決勝まで全試合に先発しているエースの衛藤慎也が、同点とされた6回以降は走者を背負いながら相手打線を無失点に抑えての完投。スコアは6-4。最後に接戦をものにした。

 斎藤監督がチームの成長を噛みしめる。

「自分自身、夏の福島の決勝よりも緊張したと言っても過言ではなかった。苦しい試合を覚悟していたけど、『秋の頂点に立つのはいかに大変か』と痛感したね。それでも、選手たちは試合のなかで流れを掴んでくれた。終盤は本来の聖光の形を出せたかな」

 現時点ならば「歴代最強」。そう断言できる強さがあるし、秋の東北大会初優勝で実証できたと言ってもいい。

 結果を出した。裏付けは確かに存在する。

 打撃では、県大会前から3年生投手が連日打撃投手を務めてくれた。夏のエース・斎藤郁也や前田秀紀ら、甲子園ベスト16メンバーと対峙したことで、須田は「質の高いボールを見られて自信になった」と断言する。

 投手陣に目を向ければ、何と言っても衛藤の復活が大きかった。7月に右ひじを手術。秋の実戦復帰が絶望的のなか、斎藤監督をして「奇跡というほかない」と驚愕させる回復ぶりを見せた。さらには、県大会で課題だった変化球の精度と内角への制球力を、ブルペンでの投げ込みや東北大会前の練習試合で克服。「力を抜く感覚が分かったんです。課題を克服できてからは、マウンドでも冷静に投げられるようになりました」と衛藤が頷く。

 東北大会決勝でも完投。手術を乗り越え、短期間で急成長を遂げたエースの姿を、斎藤監督は感慨深げにこう評する。