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奨学金を返せなくなった場合に、すぐさま取るべき次の行動

奨学金延滞の原因「労働問題」への対処法

・返済に困ったらどうすればいいか 会社に未払賃金を請求する方法

 次に、「労働問題」への対応が、奨学金返済の解決策になるということを紹介したい。

 一見すると労働環境は奨学金と無関係のように思えるが、実はそうではない。POSSEに寄せられた相談のうち、延滞してしまった最大の理由は「本人の失業(28%)」「低賃金(25%)」(複数回答可)であり、単に失業や賃金が低いだけでなく、仕事が原因のうつ病になっている人も多く(21%)、長時間労働とパワハラが原因で延滞に至った人も一定数存在すること(8%)が明らかになっている。つまり就職後の労働環境が奨学金の返済に大きな影響を与えているのだ。

 例えば、POSSEに相談に来たある20歳代男性は、新卒で入社した大手不動産会社で月80時間以上の残業を強いられていたところ、パワハラと過労で精神疾患になり数年で退職せざるを得なかった。退職後は病気で働けず、当然奨学金も返済できなくなってしまった。

 この男性の場合、毎月超長時間労働を行っていたが、会社は残業代を一切払っていなかった。月に80時間残業している場合だと、単純に計算して給料が1.5倍以上になるべきだが、会社はそれを支払わず安く長時間働かせることで利益を出していたわけだ。典型的な「ブラック企業」である(ブラック企業の詳しい手口は拙著『ブラック企業』や『ブラック企業2』を御覧いただきたい)

 こういった未払いになっている残業代はそもそも会社が法律に則って払うべきものであるが、重要なのは、請求しないとゼロのままになるということだ。この分をきちんと会社に払ってもらえれば、月2~3万円の奨学金返済も余裕をもって行うことが出来るだろう。

・泣き寝入りが最もデメリットが大きい

 会社に請求するというと気が引ける人も多いだろう。しかし、実は、「何もせずに泣き寝入りする」のが長期的に見て一番デメリットが大きい。

 POSSEに寄せられる労働相談の中には、毎月、基本給と同じくらいの残業代未払いがあるケースは少なくない。もちろん、それだけ長時間労働していることの証左であるが、考えてみてほしい。毎月もらえたはずの十数万円は、請求さえすれば、後からでも会社から払ってもらうことができるのだ。

 もし何のアクションも起こさずにブラック企業を辞めるだけでは、時には百万円以上に及ぶお金を受け取れないだけでなく、辞めた後の生活も極度に不安定になってしまう。過労やパワハラで病気になってしまったらなおさらである。

 もちろん、1人で何か行動するのは難しいので、私たちのような無料で相談を受付けている団体を頼ってほしい。専門家と一緒にアクションを起こせば必ず会社に責任を追求することができる。

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今野 晴貴

こんの はるき

NPO法人「POSSE」代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。年間2000件余りの労働相談に関わる。また、相談事例から日本の労働問題について調査、提言を行っている。著書に『ブラック奨学金』(文春新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)など。受賞歴に2013年度大佛次郎論壇賞、同年度流行語大賞トップ10など。仙台市出身、1983年生まれ。


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