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高専生のありがちな悩み「長すぎ、そして地味すぎな5年間」

人生でもっともパッとしない高専時代

NHK高専ロボコンの地区大会が始まった。早速先月上梓された『闘え!高専ロボコン ―ロボットにかける青春―』(KKベストセラーズ)を読んでみた。青春ものというと、汗を流す甲子園児やチアガールの姿が思い浮かぶが、本書に出て来る高専生はかなり素朴。作業服を着てパーツ切りに勤しむ地味な日常だ。その積み重ねの上に、華やかで激しいロボコンが成立しているのである。

 今では、コラムとイラストを書く日常ではあるが、10年前の僕は確かに高専生だった。本著にも登場するサレジオ高専のデザイン科出身。1〜3年生でスケッチやデッサン基本を習得、4〜5年生で実践的な手法を学ぶシステムであった。しかし「デザインにかける青春」かと云えば、大いに異なる。僕にとっての高専時代は、人生でもっともパッとしない時代であった。

 高専の最大の特徴は5年生ということ。中学を卒業した16歳から21歳まで、大学受験もなく専門科目に打ち込めることが魅力。入学当初、誰しもが「好きなことができる理想郷だ!」なんて思う。

 しかし、そのモチベーションが5年間も続く人間はそういない。心うつろいやすいティーンエイジャー。3年も経てば「デザインが好きなのか?」と8割が自身を疑う。口には出さないが答えはNO。残りの2年間は、単位を取るために通うハメとなる。僕も、あと何日休めるかを計算して通っていた。

 また、人間関係にも飽きてくるから様相は厳しさを増す。3年間、毎日顔を合わせていれば話すこともなくなる。高校のような授業が毎日続くので、学校生活はずーっと一緒。

 コチラは4年生に上がる頃、地元の友達は大学1年生だ。深夜のファミレスで会えば、ゼミの話、サークルの話、恋の話で大盛り上がり。高専ライフには上記の3つはほぼない、よって話には入れない。

 当時の僕は「美大生が羨ましくて仕方ない」、それだけ。
 ロケーションも悪い。サレジオ高専があるのは多摩美術大学の隣駅。5年生になっても行事は1年生と同じなもんだから、20歳にもなって学校指定のジャージでマラソン大会である。多摩美の校舎を沿い走るコース、柵の向こう側で男女入り混じり楽しそうな多摩美生。友人共々「ハァー」と人生史上最大に深いため息、今でも悪い思い出だ。

 ちなみに、高専は9割が男子生徒。デザイン科のみ半数が女子生徒であったが・・・(お察し下さい)クラスのイケてない人の吹き溜まりのようなサレジオ高専、つまり学校自体がイケてない。そこで、シャレたデザインを学ぶことが今振り返ると間違っていた気がする。

 散々、母校であるサレジオ高専をディスったが事実なのだから仕方ない。
話は逸れるが「どんな人に高専を勧めるか?」と聞かれたら「キラキラしたキャンパスライフに憧れない修行僧みたいな人」と答える。一般的な青春(愛だとか恋だとか)にかけるエネルギーを専門科目に向けられる人には超オススメ。煩悩に溢れる僕のような一般人には、向かない高専ではあった。

 高専、僕にとって唯一良かったことは、みうらじゅんさんの娘が同級生だったことだ。彼女を通じて、みうらさんと飲めたことが一番の思い出。あ、これ高専関係ないか・・・。

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ヨシムラヒロム

よしむらひろむ

1986年東京出身。武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業。

イラストレーター、コラムニスト、中野区観光大使。

2017年3月に単著デビュー作「美大生図鑑」を上梓。


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