◆「子どものためだから」という考えは、教師の身を滅ぼしかねない

 首都圏の公立高校に勤務する40代の男性教師は「楽しくゆとりがあって、なおかつ生徒たちが自分たちで運営する部活動にすれば、ストレスなく顧問ができる」と話す。文化部と運動部、複数の部活顧問を引き受けるが、大きな負担は感じないという。

 男性教師が懸念するのは、新任教師が部活漬けになって伸びないことだ。
 勝ち負けがある部活をみることは、単純に面白い部分もある。よって、赴任してすぐに部活に熱中してしまいがちだ。

「部活のせいで新任教師がまったく育たないことは、喫緊の問題です。初任でやってくるなり運動部活の指導にのめり込んでしまい、教師としての力をつけられない若手教員が少なくない。なかには、教育実習生でも書いている基本の授業案を満足に書けない者もいる」(男性教師)。

 新任は若手教員研修として3年間、いわゆる修業の身となる。週に16コマ授業があれば、年間で500時間以上授業をしているはずだ。本来なら、授業の中でさまざまな失敗を繰り返し、トライ&エラーをしつつベテランの授業なども参考にしながら、自分の授業をつくってゆく。それが、新任教師の辿る成長プロセスだという。

 ところが、部活にのめり込むと、教科や授業を深める時間をとらなくなる。教える内容が乏しいため、生徒からその新任教師に関するクレームが来たこともあった。
「あのまま上位校に転任でもしたら、本当に厳しい。初任から3年間の新任期間は授業に専念させる。そんなルールをつくってほしい」と男性教師は主張する。

 土日も休めず「顧問をしない選択をする権利を」と教師が悲鳴を上げるブラック部活。長年改善されなかったのは、「子どものためだから」という一見して正しそうな理由が教師を縛っていたからではないか。

「少々きつくてもやりなさい。だって、やりがいあるでしょ?」
 この「やりがい搾取」は、日本のブラック企業のいたるところに潜んでいる。

 そして、実は生徒にとっても「部活は青春」「部活をやってこそ中学校生活は充実する」と「やりがい」が強調され、部活が過熱していったのだろう。結果的に、生徒と教師の両者とも、同じ価値観に縛られていたとも言える。

 今後はともに、そこを改めたほうがいい。
 やりがいを感じることは大事だけれど、命や健康、生活を犠牲にしてまでやるべきではない。

 どんな部活のかたちが理想なのか。もっと議論を重ねていくべきだろう。