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【車いすのダイバー】障害をもった私も好きなダイビングをやりとげるためのあふれるような挑戦心・冒険心をもっている

寝たきりゼロの老後をすごす方法/その参

■なぜ印象に残るダイビングは少しやばい経験ばかりが多いのか?

 私の800回を越えるダイビングの中には、ゆったりと竜宮城を散歩するようなものや、ダイナミックな景色や群れ遊ぶ魚に囲まれた楽で恵まれたダイビングも山ほどあるのに、印象に残り、いつも懐かしく思い出すのは、どうしてこんな「やばい」ダイビングや、失敗談ばかりなのだろうか?

 下世話に言えば、それは「怖いもの見たさの心理」という、人間のもつ自然な感情のためなのであろう。

 そして、もっと高尚に解説すれば、
「人間は誰でも、物事に挑戦し、困難を乗り越えてやり遂げたい」という生まれながらの性質を持っていて、
「困難が大きければ大きいだけやり遂げた喜びは大きい」、そして遊びや趣味の中での楽しみの要素の中には、
この「挑戦し、困難を乗り越えてやり遂げる」という要素が入っているからに他ならない、ということになる。

 そして、障害をもった私も、障害をもたない人たちと同様に、「怖いもの見たさ」の挑戦心・冒険心をもっているのである。

■障害への認識が良くも悪くも「日本的」

 ところで「障害者にどうしてそんな危険なダイビングをさせるんだ」と、私に関わってくれた何人かのインストラクターの方が非難されるのではないかと、この話を書くのを長い間ためらっていた。

 まず第一の認識間違いは、「危険なダイビングをやらせる」という考え方だ。ハンディキャップダイビングがずいぶん普及してきた今でも、ダイビングをやっている障害をもつ人たちに対して、
「あんた、だまされてやっているのだろう」とか
「無理にやっているのだろう」という人がいる。

 ダイビングをするためには、相当の手間とお金がかかる。やりたくないのに無理無理やれるような金額じゃない。ライセンスを取るためには、講習を受け、海での実習をしなければならない。イヤイヤやれる手間ではない。
「やらされている」などと言う人は、
「障害をもつ人が一人前の大人としての判断力を持っていない」と考えているふしがあるのだ。

 第二の間違えというか、日本の風潮といった方が良いのか。「個人の自己責任という考え方がとても希薄なのだろう」と思う。海や山などのアウトドアスポーツで遭難などが出ると、ツアーの主催者やリーダーの責任については、とやかく言われるのであるが、参加者一人一人の判断の甘さについては言及されることがほとんどない
 みんな大人の集団だろうと思うのに、どうしてこういう考え方なのだろう。

 第三の間違いは、障害をもつ人への最大のサービスは「ひたすら安全に保護することだ」と思っている人たちが、レジャーやスポーツの業界でさえ、まだまだ多いことだ。最近は、障害者に対するレジャーとかアウトドアスポーツとかが普及し始めて、そのこと自体はとても素晴らしいことなのだが。

 例えば、スキーで車いすの子どもを滑らせるとき、大勢で囲むようにして、手取り足取り、けがをさせないようにしているのを見たことがあるけれど、これでは本当に「滑らせてもらっている」ので、新しいことに挑戦する喜びわくわく感もあったものではない。
 関わっている養護学校の先生達や、指導員の人たちは、善意で本当に一生懸命だけれど、とんちんかんなことになってしまっているのだ。

■障害という枠ではなく個人の力量で判断するべき

 とにかく私は、自分の意志で挑戦し、困難もトラブルも楽しんでいるのである
 そして、私と一緒に潜っているインストラクターの方々は、私を障害者という枠で見るのではなくて、私の体力を含めた力量で、そのダイビングが出来るのかどうかを判断し、危険を感じたときは「やめるように」との的確なアドバイスをしてくれているのである。

 障害があろうとなかろうと、優秀な人、魅力のある人もいるし、残念ながらそうでない人も沢山いる。
 そして、優秀であり魅力のある人は、それに見合う努力もしているのが当然で、そのような人たちの所には、障害があろうとなかろうと、いろいろなチャンスが巡ってくる。
 障害人生を左右する大きな要素であるが、絶対的な要素ではない。私はそのように考え、そのように生きてきたつもりである。

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ブログ「吉野由美子の考えていること、していること」

月刊『視覚障害-その研究と情報』

視覚障害リハビリテーション協会

 

著書・執筆紹介

日本心理学会 「心理学ワールド60号」 2013年 特集「幸福感-次のステージ」 
「見ようとする意欲と見る能力を格段に高めるタブレット PC の可能性」

医学書院 「公衆衛生81巻5号-眼の健康とQOL」 2017年5月発行 視覚障害リハビリテーションの普及

現代書棒 「季刊福祉労働」 139号から142号 
2013年 「インターチェンジ」にロービジョンケアについてのコラム執筆 142号 

● 一橋出版 介護福祉ハンドブック17「視覚障害者の自立と援助」   
1995年発行

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吉野 由美子

よしの ゆみこ

1947年生まれ。 視力と歩行機能の重複障害者。先天性白内障で生後6ヶ月の時から、7回に分けて水晶体の摘出手術を受ける。足の障害は原因不明で3歳頃から大腿骨が内側に曲がる症状で、手術を3回受けて、68歳の時に骨粗鬆症から腰椎の圧迫骨折、現在は電動車椅子での生活。
東京教育大学附属盲学校(現:筑波大学附属視覚特別支援学校、以下:付属盲)の小学部から高等部を経て、日本福祉大学社会福祉学部を卒業。
名古屋ライトハウスあけの星声の図書館(現:名古屋盲人情報文化センター)で中途視覚障害者の相談支援業務を行ったのち、東京都の職員として11年間勤務。
その後、日本女子大学大学院を修了し、東京都立大学と高知女子大学で教鞭をとる。2009年4月から視覚障害リハビリテーション協会の会長に就任する。2019年3月に会長を退任し、現在は視覚障害リハビリテーション協会の広報委員と高齢視覚リハ分科会代表を務める。(略歴吉野由美子ブログ「吉野由美子の考えていること、していること」より構成)

 

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  • 吉野 由美子
  • 1997.02.01