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戦国!井伊直虎から直政へ

季節と時節でつづる戦国おりおり第300回

 8月6日まで、江戸東京博物館ではタイトルの特別展が開催されています。恒例のNHK大河ドラマ連動企画、今回は「おんな城主 直虎」にちなんだ展示。ということで、猛暑の中行って参りました。


 ズン。

 日射が強烈すぎて、空の露出が白く吹っ飛んでしまっております。
 井伊直虎、その名と花押が入った書状はわずかに1通。そんな人物の展示を広い空間でどう見せるんだろうか、と興味津々で参りましたが、今川家関連、織田家関連、武田家関連と来たうえで曽祖父直平・父直盛・義兄弟直親の3名を織り交ぜて当時の図屏風などを「直虎の時代をいろどる絵画」としてスペースを埋める。まさにこうするしかなかろう、というやり方でした(笑)。

 あ、展示品そのものと解説は、非常に良質なものですから、ご安心下さい。そのあとはどっぷり井伊直政関係。家康、四天王の残り3人とネタは豊富です。

 個人的には今回の展示では「桶狭間合戦図」。群馬から貸し出されたもので、軍記物を元に描かれた合戦図を、幕末近くに井伊谷二宮神社の神官が写したものだそうです(原本の成立はいつなんでしょうか)。

 この絵図では今川義元の本陣が山の上に描かれています。また、信長は軍勢を二手に分け、ひとつを今川軍の先手に向かわせ、一手をみずから率いて義元本陣の後ろの山から今川後衛部隊に攻撃をかけた、との記述も。のち、桶狭間のくぼ地に布陣した義元本陣に対し山上から突撃をかけたという定説に発展する過程の半ばで描かれたものではないか、と思うんですね。この一点だけでも、この展示は見る価値あり!です。

 図録はボリューミーですが、昔とは紙質を変えるなど工夫しているのでしょう、思ったより軽いです。

 

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橋場 日月

はしば あきら

はしば・あきら/大阪府出身。古文書などの史料を駆使した独自のアプローチで、新たな史観を浮き彫りにする研究家兼作家。主な著作に『新説桶狭間合戦』(学研)、『地形で読み解く「真田三代」最強の秘密』(朝日新書)、『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる日本史』(西東社)など。


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