不動産の世界はしばしば海に例えられる。遠い過去から今に至るまで、腕利きの船乗りたちがこの海に挑み、荒波に浚（さら）われて藻屑（もくず）になっていった。不動産に魅入られ、不動産に挑戦した者の多くが海の底へと沈んでいった。それでもなぜ人はこの海に挑むのか。そこには見たこともない財宝がそこかしこに眠っているからだ。
　本ページは、荒々しくも魅力に満ちた不動産業界という大海を渡り、財宝を発見するための航海術を記した辞典であり、大手デベロッパー、大家、地主、ブローカー、地場管理会社の5人がそれぞれの立場で、奥深き賃貸の世界を語りつくしたものである【「全宅ツイ」メンバー参照】。

■コロナ禍で業者は強気の料金設定！　その実態はバルサン？

赤すぐり（以下・赤）：消毒料！　私、これにはめっちゃ言ってやりたいことがある！　あったまきちゃいます！

どエンド君（以下・ど）：いいぞっ。言ってやれー！

赤：他社管理のお部屋を案内するとき、こういう風に消毒料１万８０００円とか取る管理会社があるんです。ただバルサンひとつ置くだけですよ？　うちも管理物件でバルサンやりますけど無料です。トイレの封水処理だって、ラップで封をしても夏場は１週間おきに水を流しにいかないとくっさくなるんです、そうやっていつでもお客様を迎えられるようにしているのに、封水切れのくっさい部屋を放置してるようなとこに限って、消毒料ですよ、はあ！？

ど：そういう管理会社は、他にも色々なお金を取ろうとしますよね。

赤：そう！　消毒料１万８０００円、それで消火器７０００円、あれですよポイって投げる玩具みたいなやつ。あとなんとかクラブ加入で年間２万円。もう、お客さんも嫌がるじゃないですか……。申しわけないのでこちらも「必須ですか？　入らないでもいいんですよね？」と聞くんですよ。そうすると「必須ではありません。しかし、ご加入いただけないとＡＤ（※）は出せないですね〜」みたいな足元みてくるの。荒川に沈めたろかですよ。こういうのオーナー側は知ってるんですか！？

ど：管理会社に任せてるオーナーは、家賃と礼金以外に入居者に請求してるところは見えないので、管理会社さんがやりすぎててもわからないです。

デ：うちのビルは飲食店から毎月定期的に害虫駆除費をもらってるわよ。もちろん共用部も毎月駆除してる。

ど：毎月！

デ：だからこそＳクラスビルなんです。上層階のオフィスにタテ配管辿ってねずみやＧが出たらイヤでしょ。

ど：そうやってＳクラスビルを追い出された害虫害獣がうちのような下々の旧耐震雑居ビルに引っ越してくる…。

デ：自分のビルに出なければ知ったことじゃありません。ちゃんとこまめに害虫駆除してないケチなオーナーのビルに流れてるんじゃないかな。

ど：害虫流しそうめんちゅらい。

※【ＡＤ】空室に入居者が決まると決めてくれた不動産屋さんに対して、大家さんからAD／広告費と呼ばれるお金が支払われます。がんばってアピールして欲しい、他の部屋より先に紹介して欲しいという大家さんの気持ちが結晶になったお金です。

（売る技03へ続く）