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肩に巨大なタコができることも……神輿のユニークな担ぎ方

祭りの花「神輿」の話

▲三社祭の神輿 (C)Tokyo Convention & Visitors Bureau

 神輿は祭りの花でもあり、担ぎ手たちが威勢よく担ぎながら街中を練り歩く。前後左右に担ぎ手が分かれて上下に揺らすようにするのが一般的だが、それとは異なる方法が見られる場合もある。

 東京・千住の素盞雄(すさのお)神社で行われる天王祭では、神輿を左右交互に倒す「神輿振り」が祭りを盛り上げる。地面すれすれまで倒し合うさまは圧巻だが、担ぎ手にとっては「これほどしんどいものはない」のだとか。

 埼玉・熊谷には「あばれみこし」というものがある。神輿を担ぎながら利根川に入っていくのだが、最後には神輿を川底に沈めたり、垂直になるように倒したりしてしまうのだ。熊谷のコミュニティサイト「くまがやねっと」によれば、「利根川の氾濫と戦いながら共存した証かもしれない」とのこと。豪快な様だけが注目されがちだが、その土地の歴史に沿って生まれたものである。

 神輿とは本来、神社から神を移動させるための道具であり、豪華な飾りなどが施されるのが一般的だ。浅草・三社祭の神輿の重さは1トン近くにも及ぶ。これを支える担ぎ手の肩にはこぶのようなものができており、これを「神輿ダコ」という。

 個人差はあるものの、洋服の上からでも隆起している様子がわかるほど大きくなっている人もいる。これが大きいほど仲間から一目置かれるといい、いわば勲章のようなものかもしれない。

 はじめは足などにできるタコのように皮膚がかたくなっていき、次第にこぶ状に変化するという。大きく育った頃には痛みは感じられず、むしろ担ぐときにはクッション材のような役割を果たすように感じているそうで、除去しようとは考えていないようだ。

 この神輿ダコはガングリオン嚢胞ともいわれ、衝撃から身を守るために形成される。その中には関節液や脂肪などがつまっており、初期段階なら負荷をかけないようにすることで自然と消えるという。しかし、担ぎ手たちは休む間もなく次から次へと神輿を担いでいくため、大きくなってしまうというわけだ。

 決して楽ではない神輿担ぎだが、担ぎ手たちは地元の祭り以外にも繰り出して可能な限り参加して回る。年間50回近くも神輿を担ぐという人に話を聞いたことがあるが、その魅力は「威勢のいい声を上げて担げば人々から注目されるし、ストレス解消になる」とのこと。しかし、宮出しの際に何度も祈祷を受けているが、これといっていいことはないと嘆いていた。本来の神を祀る目的以外が大きくなっている者に対しては、神さまは意外と厳しいようだ。

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