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【一億総イジメ】握る・潰す・すり替え叩く権力と共犯のメディアと視聴者の欲望サイクル《岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㉘》

命を守る講義㉘「新型コロナウイルスの真実」

◼︎ぼくが「動画」を削除した理由

 それと、これもよく勘違いされますが、ぼくが動画を削除したのは、何かの圧力があったからではありません。

 あの後ぼくはダイヤモンド・プリンセスに入っていませんが、ぼくが入った翌日の19日から感染対策がとても良くなったと、しかるべき人物から聞いています。「とても良くなった」ということは、そこには良くなる余地があった、以前は良くなかったということですね。ぼくが動画を出した効果が確認できたことが、削除した理由の一つです。

 もう一つ、動画を削除した最大の理由は、船内の現実を伝えるために動画を公開したのに、政府の敵側に立つか、味方側に立つかみたいな本質から外れた場外乱闘の道具に使われ始めたからです。それが嫌だったので、感染対策を向上させるという目的の達成を確認してすぐに削除しました。

 たしかに動画に対する圧力はなかったのですが、その代わりにいろんなところから外されてはいます。

 例えば、とある学会の感染対策のガイドラインでは、今までずっとメンバーに入っていたのが露骨に外されてしまいました。しかも外されたことを知らされず、メンバー表が出てきたら今まで一緒に働いてた人たちの名前はそのままあって、ぼくだけが外されていたのです。

「LINE外し」ってご存じですか? 子供たちがいじめをするときに、同じクラスの全体LINEでいじめの対象になっている人だけを外すっていうやつです。

 外された本人は気づかないまま、他の仲間だけでLINEを回して一人だけ仲間外れにする。あれと一緒ですよ。自分がこういうことに遭うと、日本は徹底的ないじめ社会だって実感しますね。

 面白いことに、例えば神戸大学病院の同僚のように一緒に働いている人は全くそんなことなくて、「ああ大変でしたね、お疲れさまでした」と労ってくれて、これまで通り普通に仕事をしています。

 普段顔を合わせない、遠くにいる人がそういういじめをしたり、匿名で「おまえのやったことは国益に反する」みたいな手紙を送ってきたりするんですね。

岩田健太郎

「新型コロナウイルスの真実㉙へつづく)

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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