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やがて監査も機械化。スマートコントラクトで企業の不正会計はなくなる

最速で成長するために③

マッキンゼーで14年間活躍し、現在も国内、国外の大手企業、ベンチャー企業で経営戦略の立案や実行支援、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリードしているブレークスルーパートナーズ株式会社・マネージングディレクターの赤羽雄二さん。『3年後に結果を出す 最速成長』(KKベストセラーズ)を刊行するのに併せて、最先端のコンサルタントの世界から見た、これからの10年と対応策について訊いてみた。

 

受付、秘書、管理、経理、会計、監査など、事務の仕事の大半がなくなる

──前回まで、これからの10年で、運転、機械操作、倉庫作業、レジ打ちなどの肉体労働の大半がなくなっていくというお話を中心に聴きました。そのほかでもなくなる仕事は広範囲にわたるということですが?

「肉体労働だけではなく、受付、秘書、管理、経理、会計、監査など、事務の仕事の大半もなくなっていきます。そうした単純作業が次々にAI、ブロックチェーンに置き換わっていくからです。繰り返しの多い作業や、あまり考える必要がなく、ともかく煩雑だった作業は、機械のほうがはるかに安価に、かつ圧倒的なスピードでこなしてくれます。

 上記の職業のうち、会計の判断に関わる業務は、しばらくの間、専門家が価値ある判断を提供すると思います。監査も同様です。ブロックチェーン上で、事前に合意した契約内容を自動的に履行できるスマートコントラクトの内容に不備がないか、すべての取引を捕捉できているかなどは、これから確認が必要だからです。ただ、それも、ある程度以上、類型化できると自動化が進みます。

 非定型な作業、業務はもう少し時間がかかります。例えば、企画、顧客開拓、マーケティング、人事、プロジェクトマネジメント、事業部・子会社管理、などですね。それでも、急激に賢くなる機械が、生身の人間を容赦なく置き換えていくと考えたほうがいいです。私たちの今ある仕事は、少ない人で自分の仕事の2~3割、多い人であれば6~7割がその対象になるのではないでしょうか。私はそういうふうに覚悟しています。

 いったんその方向に動き始めたら、もう止めようがありません。急激に人余りになりますので、業績が順調な企業でも、肩たたきが始まります。それからでは遅いので、今から定型的な作業をできるだけ減らし、価値ある業務にだけ取り組む体質、姿勢を意識して強化しておく必要があります。

 受付に関しては、現在でもほとんどのベンチャー企業で電話機1台が置いてあるだけで、人が配置されていません。中小企業でも同様ですね。一部の大手商社や旧来の大企業では、今も受付が4、5人ひかえていて驚きますが、あまり必要があるとも思えませんし、実際廃止した大企業も増えています。今後は、急激になくなるのは間違いないと思います。

 秘書業務は、スケジュール管理に関しては、自動化が進み、スケジューラーや音声認識などをうまく使って、自分でスケジュール管理をする人が急激に増えています。いちいち秘書に頼んでスケジュール管理をする人は、旧来の大企業の部長以上などに限られているのではないでしょうか。ただ、それも見ていると、大きく生産性向上に役立っているようでもなく、雇用機会提供の感が否めません。自分でやり取りしたほうがよほど早いですし、秘書がいったん預かって上司の意向を確認する二度手間がなくなります。

 また、役員以上になると、会食設定などの調整がかなりあります。ただそれも、食べログなどと連動するアプリが出てくれば、今より格段に容易になりますので、あと何年必要な業務かは疑問です。今、秘書の腕の見せ所になっている、接待に最高なレストランの選定、場所おさえ、見晴らしの良い席の確保などは、一番アプリ化しやすいところです。

 秘書業務以外でも、多くの事務作業がなくなります。事務作業とはスケジュール調整、書類作成、書類回覧、振り込み、入金確認、帳簿確認、決算報告、会議開催案内などですね。グーグルカレンダーのようなものがすべて音声認識してくれ、入力も声での説明もしてくれるようにからです。数十年前から言われていたパーソナルアシスタントがついに実現すると思います。

 単純作業だけではなく、10年もたたないうちに経理、会計、監査などの仕事のかなりの部分も自動的に処理されるようになっていきます。

 さらに、これまで税理士、会計士などの専門職と言われていた仕事も、ブロックチェーン時代になってスマートコントラクトが普及すると、その都度、自動的に決済され、記帳されるようになります。

 スマートコントラクトというのは、ITシステム、ネットワーク上でプログラム化された契約だとご理解ください。会社の取引、物流、自動車とガソリンスタンドなどが事前に決めた契約内容で自動的にやり取りをして、人手をかけずに手続き、決済してくれるものです。その結果がブロックチェーン上にすべて記載されますので、改ざんのない信頼できる仕組みになっています。そうなると月次、週次どころか日次あるいは時間単位でも売上が正確に計上されていきますので、経理部門も税理士、会計士もその大半の業務が減っていきます。

 監査も同様で、人間が処理しているために、記帳ミスが起きたり、意図的な利益隠しをしたり、裏帳簿を作ったりします。スマートコントラクトベースで瞬時に処理されれば、監査の仕事の大半がなくなっていきます。不正をすると、その事実は未来永劫残りますので、デメリットのほうが大きくなり、不正が減っていきます。世間を大いに賑わした東芝の不正会計のような問題が根本から絶たれていくわけです。

 その他、受付、秘書、管理、経理、会計、監査など以外でなくなる事務の仕事として、英オックスフォード大学の研究では、銀行の融資担当、保険の審査担当、給与・福利厚生担当、クレジットカード承認・調査、金融機関のクレジットアナリスト、弁護士助手、不動産ブローカーなどが挙げられています」

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赤羽 雄二

あかば ゆうじ

ブレークスルーパートナーズ株式会社マネージングディレクター。東京大学工学部を1978年に卒業後、コマツで超大型ダンプトラックの設計・開発に携わる。1983年よりスタンフォード大学大学院に留学し、機械工学修士、修士上級課程を修了後、マッキンゼーに入社。経営戦略の立案と実行支援、新組織の設計と導入、マーケティング、新事業立ち上げなど多数のプロジェクトをリード。マッキンゼーソウルオフィスをゼロから立ち上げ、120名強に成長させる原動力となるとともに、韓国LGグループの世界的な躍進を支えた。主な著書に『ゼロ秒思考 頭がよくなる世界一シンプルなトレーニング』(ダイヤモンド社)、『頭が真っ白になりそうな時、さらりと切り返す話し方』(KKベストセラーズ)、『入社3年塾』(三笠書房)等がある。


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