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かつて地球は真っ白だった!? 「スノーボールアース」と呼ばれた時代

地球全体が凍りに覆われていたという事実。リアル『スターウォーズ』の世界!?生物はいたのか?

 写真は『スターウォーズ、エピソード5』の冒頭に出てくる氷の惑星ホスではありません。れっきとした、太古の地球「スノーボールアース」と呼ばれた時代の想像図です。

太古の地球「スノーボールアース」

 地球の成り立ちをおぼろげながらもイメージされている方は、“火の玉の様な地球”が徐々に冷えて、海が出来、現在の様な“青い惑星”になったと考えられているのではないでしょうか?

 事実、長い間、氷河期程度の気候変動は認識されつつも、地球はずっと“青い水の惑星”だったと信じられていました。

 しかし、1980年代後半から90年代前半にかけて、約6億年前には赤道地域にあったとされる世界各地の地層に、大陸氷床(大陸に降った雪が圧縮されて氷になったもの)が存在していた証拠が発見されたのです。これは当時の地球が、赤道域まで氷河に覆われていたことを意味します。

 ほかにも、同時期には、長期間にわたって日光が海中へ進入できなかったことを示す堆積物や、太陽光がないために光合成が停止していた証拠なども見つかりました。

 そして、1992年、カリフォルニア工科大学のカーシュビンク博士は、これらの謎を解くために、地球全体が凍結した時代があったという「スノーボールアース(全球凍結)仮説」を提唱しました。

 凍りついた地球を雪玉になぞらえた名称です。

 そもそも、地球の温度というのは、大気中の二酸化炭素の濃度に影響されます。

 現在、地球の平均気温はおよそ15℃ですが、二酸化炭素などの温室効果ガスがなければマイナス19℃くらいまで下がるといわれています。また現在、大気中の二酸化炭素の濃度は0・03%ほどです。ですので、温室効果ガスのわずかな量の変化が、地球の環境に大きな影響を与えていることになります。

 約7億年前、何らかの理由によって大気中の二酸化炭素濃度が下がりました。その結果、温度は下がっていき、徐々に大陸の氷河が広がっていきます。氷河がある程度広がると地球は白くなり、「白い地球」はその白さゆえに太陽光を跳ね返すようになります。

 そして、極地から広がっていった氷河が北緯(南緯)30度くらいまで及んでくると、太陽光の大部分が反射されるようになり寒冷化が加速、一気に赤道域まで氷に覆われてしまいます。

 この状態が「スノーボールアース」です。全球凍結時の地上での平均気温は約マイナス40℃まで下がり、海の氷の厚さはなんと約1000mにも達したと考えられています。まさに死の世界です。

 さらに現在では、全球凍結は、約22億年前という原生代初期,約7億年前と約6億年前という原生代後期という、少なくとも3回は起こったことがわかっています。 

 そのたびに生物が、といってもバクテリアの様なミクロな生物ですが、絶滅の危機に瀕することになったのです。

 しかし、現在では、その研究がさらに進み、そのスノーボールアース直後こそ、生物を飛躍的に進化させたことが解明されつつあるのです。

 死の世界から生命の進化、まるで神話の様な話です。

<『46億年の地球史図鑑』より抜粋①>

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高橋 典嗣

たかはし のりつぐ

1958年、東京生まれ。日本スペースガード協会理事長。明星大学、神奈川工科大学、麻布大学、武蔵野大学非常勤講師。明星大学理工学部物理学科卒業。日本大学大学院博士前期課程で宇宙人間科学、千葉大学大学院博士後期課程で公共研究を専攻。日本学術会議天文学国際共同観測専門委員、日本学術観測団団長(ザンビア皆既日食)、学校科目「地学」関連学会協議会議長、天文教育普及研究会副会長などを歴任。著書に『46億年の地球史図鑑』(ベストセラーズ)『138億年の宇宙絶景図鑑』(ベストセラーズ)、『巨大隕石から地球を守れ』(少年写真新聞社)、共著に『大隕石衝突の現実』(ニュートンプレス)ほか多数。


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