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最後にこれだけは言わせてくれ。ノムさんが選手たちに贈った言葉「プロの世界で生き抜くために必要な3つ。それは『思考』『感性』『勇気』」

野村克也さん3月毎日更新 Q.30 最後に、今のプロ野球選手に常に備えていてほしいものは何ですか?

大好評「30問30答」、いよいよ最終回! 最後に野村克也氏が残してくれた珠玉の言葉。野球選手だけでなく、迷いの時代を生きるビジネスマン、今を生きる全ての人々に噛み締めてもらいたい。

苦労と真剣に向き合うことは、一流選手になるためのチャンス

 少年時代の貧乏生活、南海ホークスへのテスト入団、プロ1年目のクビ宣告、どん底の2軍時代、1軍定着後のスランプ、プレーイングマネージャー解任など……。いま振り返ると、私の人生は苦労の連続でした。

 ただ、私が60年もの間プロ野球の世界に身を置くことができているのは、こうした苦労とは無縁ではありません。

写真/高橋亘

 誰だって苦労は味わいたくないものですが、苦労に真剣に向き合えるかどうかで、人間としての成長も大きく変わってくるんですよね。

 なぜなら、もし本気で苦労から抜け出したいのならば、当然、そのための方法を一生懸命考えるようになります。そこで生まれてくるのが「思考」という習慣です。 

 プロ野球の世界で言えば、自分が2軍から1軍のレギュラーに這い上がるためには、ライバルたちと比較して自分には何が足りないのか、そのためには何をすればいいのか。頭を使って、必死に「思考」するわけです。 

 そうすると、いつしか自分や周囲の人間が置かれている状況や心理状態などを敏感に察することができるようになる。「感性」が磨かれていくんです。

 さらには、苦労から抜け出すためには、新しいことに挑戦したり、今の自分をまったく違う自分に変える必要性も出てきます。そのとき求められるのが「勇気」です。

 私が選手、監督時代に徹底して心掛けていたことはこの3つ。相手チームと対戦する際には、試合前から「思考」を働かせて考え抜くこと、試合中は「感性」を活かして、相手の選手やベンチの心理状態などを読み取ること、そして勝利のためには失敗を怖れず、「勇気」を持って挑戦することでした。 

 つまり、さまざまな苦労を通して「思考」「感性」「勇気」を身につけ、常に備えることができたからこそ、素質も実力もほとんどなかったテスト生上がりの私が、選手としても監督としても実績を残すことができたというわけです。

 プロ野球の世界で生き抜いていくうえでも、今の選手たちにはこの3つを常に備えていてほしいと思いますね。

 そのためには、苦労に直面しても決して逃げてはいけません。「俺の力はこんなものだろう。もうこれで十分だ」と、自分自身に対して限定し、満足し、妥協したら、その時点でその選手の野球人生が終わってしまうでしょう。

 古くから「若いうちの苦労は買ってでもしろ」と言われますが、選手たちには、自ら苦労の中に飛び込んでいくぐらいのプロ意識を持っていてほしい。裏を返せば、プロ意識とは恥の意識。「このままではプロとして恥ずかしい」という意識を持ち、「思考」「感性」「勇気」を限界まで働かせることができた選手だけが、長年に渡って一流として生き残っていけるんですよね。 

 つまり、苦労と真剣に向き合うことは、一流選手になるためのチャンスなんです。そして、プロ野球選手には誰もがなれるわけではない。そのことを誰もが胸に刻み、訪れるチャンスを活かしていってほしいですね。

(編集部より)野村克也氏「30問30答」、一カ月お付き合いありがとうございました。過去の記事は「BEST TIMES」で一覧で読めます。是非チェックしてみてください。

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野村 克也

のむら かつや

1935年、京都府生まれ。1954年にテスト生として南海ホークスに入団。1980年に45歳で現役を引退、解説者となる。1990年には、ヤクルトスワローズの監督に就任し、4度のリーグ優勝、3度の日本一に導く。1999年から3年間、阪神タイガースの監督、2002年から社会人野球のシダックス監督、2006年から東北楽天ゴールデンイーグルスの監督を歴任。2010年に再び解説者となり、現在、多方面で活躍中。


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