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慢性腰痛に抗うつ薬を投与!? 意外と知らない最新の治療法

専門医が素朴な疑問に答えます! 腰痛治療のQ&A

腰痛には温湿布or冷湿布? 整体・整骨・マッサージ・カイロの違いは? 腰痛治療に関する素朴な疑問に、福島県立医科大学教授の大谷晃司さんがお答えします(『一個人』2016年12月号取材時)。

▲整形外科が行う腰痛治療法

Q 急性腰痛なら冷やし、慢性腰痛なら温める?
A よく、急性痛の場合は炎症を抑えるために冷やし、慢性痛の場合は血流を改善するために温めるといわれます。理にかなった治療法のように聞こえますが、実のところ腰痛に限っては、温冷どちらが有効かという科学的根拠はありません。私の患者さんでも、夏になると冷湿布、冬になると温湿布を使用している方がいます。要は、痛みが緩和されればいいわけですから、気持ちがいいと感じるほうを使っていただいて構いません。

Q コルセットを着けると筋力が低下する?
A コルセットは、装着することで腹圧を維持できるため、重量物を動かすときなどの動作がラクになることがあります。だからといって、コルセットに頼りきって継続装着していると筋力が低下するということは、基本的にはありません。コルセットを装着することで腰痛がやわらぐ、安心感があるという場合は、普段から使っても構わないと思います。

Q 抗うつ薬を出される場合もある?
A
 慢性腰痛の場合、痛みが長く続くと気分が落ち込んでうつ症状を併発することがあるため、抗うつ薬を使うことがあります。また、抗うつ薬は、脳内でドーパミンを産生して痛みを抑制する働きがあり、投与すると痛みが劇的に治まるケースもあります。2012年発表の腰痛診療ガイドラインでも、抗うつ薬は慢性腰痛の第2選択。腰痛を抱えるすべての人に有効とは限りませんが、ひと昔前より一般的になっています。

Q どんな症状にブロック注射が有効?
A
 椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症で両脚にしびれや麻痺があり、歩きにくいなどの症状がある場合は、馬尾障害の可能性があります。馬尾への圧迫が長く続くと、手術をしても症状が改善しないことが多いため、軽症のうちに交感神経節ブロック注射を行うと症状が軽減するという報告があります。片側の脚にしびれや麻痺、痛みがある場合は、馬尾の横にある神経根の障害ですから、神経根ブロック注射が効果的です。

Q 牽引療法には、実は効果がない?
A
 牽引療法とは、脊椎を上下に引っぱって椎間板の変形を元に戻したり、椎間板内圧を軽くして腰痛を軽減しようというものです。整形外科医院や接骨院などでは日常的に行われていますが、実はこの牽引療法も、腰痛治療に有効であるという科学的根拠は報告されていないのです。牽引をして腰痛が緩和された、気持ちがいいと感じるならば続けて結構ですが、効果が感じられないときは、ほかの療法に切り替えた方がいいでしょう。

Q 保存療法が効かなければ、手術をするべき?
A
 大半の患者さんは保存療法で徐々に回復していきますが、MRIなどの画像検査で原因が明らかな場合には、手術を検討します。椎間板ヘルニアで手術が必要になるのは、10人に1人ぐらいです。脊柱管狭窄の場合も、整形外科への受診が早ければ、コルセットなどを用いた装具療法や神経ブロック注射などの保存療法で治ることが多いのです。ただし、馬尾障害が悪化した場合には、手術を要します。

Q 代替療法は効く? 効かない?
A
 欧米では、社会的地位のあるカイロプラクターたちが科学的根拠に基づいた腰痛改善に関する論文を数々発表しています。しかし日本では歴史が浅く、民間資格というのが現状です。実際に改善したという方もいますが、代替療法が腰痛に効くという科学的根拠はありません。まず整形外科を受診し、医師の指示のもとで信頼できる治療院にかかることをおすすめします。その上で、効果があると感じるなら続けるのもいいでしょう。

写真を拡大 ▲腰痛の主な代替療法。

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大谷 晃司

おおたに こうじ

福島県立医科大学 教授

医学博士。年間に延べ1万人もの患者を治療する運動器疾患の名医。著書『長引く腰痛は"脳の錯覚"だった』(朝日新聞出版/共著)ほか、テレビ番組でも活躍する。


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