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「宇宙の仕事で生きるものはビジネスの世界でも生きる」宇宙飛行士・大西卓哉さんの“準備力”とは?

独占インタビュー! 元パイロットならでは。宇宙飛行士・大西卓哉さんの仕事術①

昨年、4ヶ月にも渡るISS長期滞在ミッションを成し遂げた、大西卓哉飛行士。その成功の陰には、JAXA管制官をして「準備の鬼」と言わしめた、徹底的な準備があった――。そしてそれを生かしたコミュニケーションの技術とは? ビジネスマン必読、宇宙飛行士の仕事術。

宇宙飛行前の不安は「全くない」

 

――まず、宇宙に行くに当たって、体の面での準備(トレーニング・食事)はどのようにしていましたか。

 特別宇宙に行く前に集中して、というわけではないですがベンチプレス・腕立て・有酸素運動等のトレーニングは継続して行っていました。ちなみに、宇宙飛行士が一番使う筋肉は握力なんです。船外活動時が特にそうです。真空との圧力差で宇宙服がパンパンになっているので、グローブを握るのにもかなりの力が必要で、戻ってくると手の感覚がなくなるほどです。

 次に食事ですが、宇宙飛行士だからといって特別な献立が用意されているわけではありません。ただし、食事の内容を1日3食×3日間を1セットにして定期的に写真付きで栄養士に送ってチェックを受けるようになっています。野菜は意識してとるようにはしていましたが、大好きなラーメンもよく食べに行っていましたので(笑)、あまり一般の方と食生活は変わらないと思いますよ。

――では、メンタル面での準備はどのようにされていましたか。宇宙に行く前はどうしても不安や恐怖心がついてまわると思うのですが……。

 驚かれるかもしれませんが、私は宇宙飛行前の恐怖心は全くありませんでした。ひとつはパイロット時代同様、事前にイメージ飛行を行ってシュミレーションしていたからです。また数々の「想定外」の危険を想定した訓練を行っていたのも大きいです。宇宙において警戒すべき3つの大きな危険――アンモニア漏れ・火災・急減圧――への対処訓練は徹底的に行いました。例えば訓練中に、急に船内にアンモニアが漏れだしたり、火が出たり、気圧が下がったりという「想定外」が起きるわけです。それは予め決められてやることもありますが、ドッキリで起こることも多く気が抜けません。

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大西 卓哉

おおにし たくや

JAXA宇宙飛行士。前職は旅客機パイロット(全日本空輸ボーイング767型機副操縦士)。



2016年7月~10月、ISS第48次/第49次長期滞在クルーのフライトエンジニアとしてISSに約113日間滞在。



滞在中は、日本人初のシグナス補給船のキャプチャを遂行。「きぼう」日本実験棟船内に新たな利用環境を構築するとともに、様々なミッションを実施した。


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