「必要なもの」から捨てる技術【適菜収】 連載「厭世的生き方のすすめ」第25回
【連載】厭世的生き方のすすめ! 第25回
◾️太川陽介のサインはいらない
世の中には、どう考えてもいらないものがある。たとえば、修学旅行生が立ち寄る土産物屋で売っているペナント。「京都」「大阪城」などと書かれた二等辺三角形の布切れ。あれは本当にいらない。小学生の頃、あれを自分の部屋の壁一面に貼っている同級生がいた。子供心に「こいつとは仲良くなれないな」と思った。
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ごくたまに「本にサインしてくれ」と頼まれることがある。あの感覚もわからない。マイケル・ジャクソンのサインならともかく、私のサインが入っていたらブックオフに売りにくくなるだけである。
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これも小学生の時の話。実家近くにあるテレビ局に見学に行くと、太川陽介がゲストで来ていた。番組終了後に、若い男がサインをもらっていたが、私のサイン並みに、太川陽介のサインはいらない。
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別の日にも友人と一緒に見学に行った。4人組のロックバンドがゲストで来ていたので、番組終了後、そのお兄さんたちを取り囲み、スーパーマーケットのチラシの裏やノートを破いた紙にサインを書かせて、帰りにゴミ箱に捨ててきた。
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中学生の時には、甲府に具志堅用高がオーナーのラーメン屋ができた。開店記念でラーメンが50円だったので、友人5人と一緒に行った。ラーメンを食べ終わると、厨房から具志堅が出てきて、「サインが欲しい子はいるかな?」と言った。ガキどもは我先にと手をあげ、具志堅を取り囲んだ。そして具志堅が「色紙代は50円だよ」と言った瞬間、蜘蛛の子を散らしたように、全員帰って行った。その時の具志堅の鋭い目は今でも覚えている。
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捨てる技術が板についてきたら、今度は人間関係の整理をしたい。一番いいのは引っ越しだ。相手に住所を教えなければ、自然に疎遠になる。電話番号をこまめに変えるのもいい。我々はもっと人見知りになるべきだ。
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友人も選ぶべきだ。論理的な人間は面倒だし、非論理的な人間も面倒。だったら誰ともつきあわないほうがいい。私にはたまに会食する友人が少数だけどいる。彼らは無駄なことは一切しゃべらない。某官僚は駄洒落しか言わない。
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必要だと思い込んでいるものほど、いらないものだったりする。「失って困るのは最初の3日間だけ」と離婚した私の友人も言っていた。
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昔、天地真理の『ひとりじゃないの』の替え歌を作ったことがある。
〽ふたりじゃないって 素敵なことね
文:適菜収
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