脳梗塞になって失った〝途方もなく大きなもの〟と新米身体障害者の〝自宅生活における課題〟【真柄弘継】連載第12回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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脳梗塞になって失った〝途方もなく大きなもの〟と新米身体障害者の〝自宅生活における課題〟【真柄弘継】連載第12回

【連載】脳梗塞で半身不随になった出版局長の「 社会復帰までの陽気なリハビリ日記」163日間〈第12回〉

 

◆薬は私の命をつなぐ大切な薬。飲み忘れなど言語道断

 

■10月1日水曜日

雨の夜明けで始まった10月。

いよいよロングスパートの始まりでもある。

脳梗塞になって116日。

リハビリテーション病院へきて99日。

発症から回復期の半年も、入院期限の150日も間もなくである。

何度か書いているけど、もうリハビリというレベルじゃなくトレーニングと言える内容を日々繰り返している。

昨夜は全身筋肉痛で何度も目が覚めた。

いつもの脳のモヤモヤで目が覚めるのと相まって、これまでにない苦しさであった。

これが治るという保証もない。

病院にいる間は気にせずにリハビリトレーニングに取り組むしかない。

 

タイムトライアル。

3分27秒。

 

毎日服用している薬について書いておく。

朝10種類、昼1種類、夜3種類の薬を毎日飲んでいる。

7月中は毎食後に看護師さんが持ってきてたけど、8月からは自己管理ということで一週間分をまとめて渡されるようになった。

渡されるのは毎食後呑む薬が一つの小袋に入っているもの。

この小袋を自己管理だから食事に行く時に自ら持参しなければならない。

自己管理できるのは認知機能に問題がない患者さんたちだ。

見守られ老人や脳卒中で極端に身体機能が低くなってしまった人は自己管理をさせてもらえない。

一週間分を渡されるから、朝昼夜ごとに小袋を小分けして準備をしておくのだ。

10種類も服用しているけど脳梗塞というよりは、血圧だったり心臓の薬だったりという具合だ。

これらの薬は私の命をつなぐ大切な薬だから、飲み忘れなど言語道断。

 

朝一番は足のリハビリ。

布団での寝起きの練習。

病室はベッドだから失念していたが、自宅は布団で寝ているから、その寝起きの練習をした。

右側が不自由だと布団に横たわるのも大変なのだ。

そこから起き上がるのはさらに大変。体幹がしっかりしてないと厳しい。

歩きのために自主トレで腹筋など体幹を鍛えておいてよかった。

膝をついて横になるのも、寝た姿勢から起き上がるのも、恐ろしく難しい。

この練習で会得しなければ布団で寝ることは生涯二度とは出来なくなってしまう。

外の気温が24度で涼しくても、汗を吹き出しながら繰り返し練習をした。

金曜日の夜から土曜日の朝まで自宅で眠るため、この練習は明日も明後日も続けよう。

 

二つ目も足のリハビリ。

歩けるようになる前はバランスや足への体重移動を何度も練習した。

杖無しで歩くのにも同様の練習を繰り返し行い、久しぶりに頭がこんがらがった。

考えるどころか無意識にしていたことを意識するのは難しい。

両足の重心を交互に移すことや、軸足側の重心を高くするとか、そんなこと考えながら歩くと躓いてしまう。

歩くだけなのに本当に大変なことだ。

 

最後も足のリハビリ。

異動で今日から来られた理学療法士のT本さん。

ベテランのセラピストさんで、今の私の身体の状態をチェック。

鍛えていくべき筋肉の場所と、具体的な鍛え方を教えてくれる。

合わせて自分で出来る新しいストレッチを教えてもらったので明日から早速実践しよう。

セラピストさんは経験を積めば積むほど知識が増える。

より実践的な運動の仕方を教えてくれるから、ベテランの人にはいろんな質問をしてしまう。

今日は足のリハビリを1時間3コマだったから、肉体的疲労は大きい。

新しいことを知ることが出来たから満足感も高い1日であった。

 

このリハビリテーション病院の症例別入院患者の割合は半分が脳疾患、いわゆる脳卒中が一番多い。

ところが最近は食堂で見かける患者さんは普通に歩いているし、両手でご飯を食べている。

こんな人たちも脳卒中だという。

見た目では分からない。

食堂に空席が目立つようになった。

入院患者が減ったのだろうか?

なんとなく気になったから看護師さんに聞いてみた。

私やN村さんのような自分で動けて食事も介助なく出来る脳卒中患者は少ないという。

ほとんどが病室で介助されながら食事をしているから少なくみえるそうだ。

そんな話をN村さんにすると、

「我ら中卒はいろいろ大変だよな」

とユーモアたっぷりに脳卒中をひっくり返して中卒と言い表した。

思わず、山田クン座布団あげてと言いそうになった。

今夜も土曜日に備えて早目の就寝。

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真柄弘継

まがら ひろつぐ

現役出版局長

1966年丙午(ひのえうま)126日生まれ。

1988年(昭和63)に昭和最後の新卒として出版社に勤める。

以来、5つの出版社で販売、販売促進、編集、製作、広告の職務に従事して現在に至る。

出版一筋37年。業界の集まりでは様々な問題提起を行っている。

中でも書店問題では、町の本屋さんを守るため雑誌やネットなどのメディアで、いかにして紙の本の読者を増やすのか発信している。

 

2025年68日に脳梗塞を発症して半身不随の寝たきりとなる。

急性期病院16日間、回復期病院147日間、過酷なリハビリと自主トレーニング(103キロの体重が73キロに減量)で歩けるまで回復する。

入院期間の163日間はセラピスト、介護士、看護師、入院患者たちとの交流を日記に書き留めてきた。

自分自身が身体障害者となったことで、年間196万人の脳卒中患者たちや、その家族に向けてリハビリテーション病院の存在意義とリハビリの重要性を日記に書き記す。

また「転ばぬ先の杖」として、健康に過ごしている人たちへも、予防の大切さといざ脳卒中を発症した際の対処法を、リアルなリハビリの現場から当事者として警鐘を鳴らしている。

 

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