昭和百年、ドラマを超えた?ジェームス三木の「春の歩み」、長嶋茂雄という「巨星墜つ」の陰で転落していた大投手 2025(令和7)年その2【連載:死の百年史1921-2020】番外編(宝泉薫)
連載:死の百年史1921-2020 【番外編】2025(令和7)年その2
さて、最後は個人的に縁を感じる人の話で締めくくりたい。
まずは、脚本家の内館牧子(享年77)。1990年代前半に同じ雑誌(『週刊テレビ番組』)で連載を持ち、話もさせてもらった。また、彼女は東北にゆかりの深い人で、2008年に心臓弁膜症で倒れたのも「盛岡文士劇」で岩手に滞在中のこと。当時盛岡市内にあった岩手医科大学附属病院に運ばれ、二週間、生死の境をさまよった。

ここはAKB48握手会傷害事件(14年)で被害に遭った川栄李奈らが運ばれた病院でもあり、筆者の自宅の近所だ。義父が生前、教授を務め、妻が息子を出産した。国立大の医学部がない岩手にとっては、地域医療の本丸でもあり、それゆえ、内館が命拾いしたときはホッとしたものだ。
しかも彼女は、
「本当にラッキーなことに、そこにカリスマといわれる心臓外科の名医がいらして、すぐに緊急手術をしていただけました」
という言葉も残している。こちらとしても、彼女がそこから17年生きてくれたことに感謝である。
そして、もうひとり、渋谷陽一(享年74)の訃報にもちょっとしみじみさせられた。筆者が物書きになったきっかけのひとつでもあるミニコミ誌『よい子の歌謡曲』には、彼及びその周辺のロック評論や出版姿勢に惹かれるスタッフが多かったからだ。また、90年代からゼロ年代にかけて『音楽誌が書かないJポップ批評』で執筆していた時期には、彼が『ロッキング・オン(rockin’ on)』の日本版として始めた『ロッキング・オン・ジャパン(ROCKIN’ON JAPAN)』の記事コピーが参考資料として編集部からよく送られてきた。
接点はそれくらいで、彼の文章自体はほとんど読んだことがないが、自分の人生に影響を与えた人であることは間違いない。あと、若い頃の筆者がやろうとしてできなかった出版と商売の両立をやってのけた点でも畏敬に値する。
とまあ、このふたりで締めくくるつもりだったが――。記事の構成を考えているさなかに、久米宏の死というニュースが飛び込んできた。亡くなったのは1月1日だから、昨年の死には含まれず、書くなら一年後ということになる。

とはいえ、昭和の戦争にこだわっていたこの男が、昭和百年でもある令和7(2025)年が終わったタイミングで去っていったのは感慨深い。その人生は功罪半ばするものでもあり、ゆっくりと毀誉褒貶を考えるとしよう。
もちろん、人の生き死には人知の及ぶところではないから、一年後に健康な状態でちゃんと書けるよう、気を引き締めて日々をすごしていきたいものだ。生きている側にとって、死との遭遇にはそんな効用もある。
(宝泉薫 作家・芸能評論家)
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