遠野なぎこと飯島愛の孤独死と『金スマ』、海老名香葉子の訃報で思い出す元アイドルの悲劇 2025(令和7)年その1【連載:死の百年史1921-2020】番外編(宝泉薫)
連載:死の百年史1921-2020 【番外編】2025(令和7)年その1
さて、遠野や飯島のような死もあれば、それとは対照的な死もある。12月24日に、老衰で世を去った海老名香葉子(享年92)のことだ。
11歳で東京大空襲に遭い、戦災孤児となりながら、亡父の縁で落語家に引き取られ、初代・林家三平と結婚。夫が早死にしてからも、女将として一門を支え、息子ふたり(九代目・林家正蔵、二代目・林家三平)を一人前にした。

エッセイストとしても才能を発揮し、戦争体験を綴った『うしろの正面だあれ』はアニメ映画にもなっている。そのバイタリティーは同学年の黒柳徹子に匹敵、というか、妻や母としての成功を加味すれば、それ以上なのではないか。
そんな海老名の「強さ」を何よりも感じさせたのが、ある「会見」だった。1986年、一門の落語家・林家しん平が元アイドルの桂木文とスピード離婚。しん平が仕事で不在の日に、女将主導による会見が行われた。離婚の原因についても、海老名が説明。「肉体的にも大人ではなかった」「ぬいぐるみを抱いて寝るような子」などともっぱら妻の未成熟さを挙げ、桂木自身も夫から「もっと太って丈夫になれ」と言われたことを明かした。
これについてある女性週刊誌は『林家しん平との〝6か月で離婚〟の一因 桂木文の〝体重減少性無月経〟のつらさ』という記事を掲載している。実際、この会見の三年ほど前、彼女は男性誌で激痩せから回復途上だということを告白。アイドル時代は160センチで50キロだった体重が一時は35キロになり、その時点でも40キロはないように見えた。
また、離婚後もそんな体型のまま、テレビに出たり、ヌードになったりしていたことを思うと、彼女の抱えていた心身の問題は根深いものだったと考えられる。海老名のような姑の眼鏡にかなうような嫁ではなかった、ということは間違いない。
というわけで、老女将の幸福な死は、そんな四十年前の悲劇も想い起させた。ちなみに、海老名は遺影の写真を自ら指定。亡くなったのがクリスマスイブだったことから、長男の林家正蔵ら子供たちの歌う『ジングルベル』に送られながらの大往生だったという。
その正蔵は喪主あいさつのなかで「うめぇことやりやがったなぁ~」と呼びかけた。そう、人生、上手くやれる人もいれば、その逆の人もいるのだ。それが世の中だと、さまざまな死は教えてくれる。
文:宝泉薫(作家・芸能評論家)
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