作文のお題は『ダカーポ』で【新保信長】 連載「体験的雑誌クロニクル」29冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」29冊目
ここで場面は冒頭に戻り、マガジンハウスの入社試験である。作文のお題として、『平凡パンチ』でも『ポパイ』でも『ブルータス』でもなく『ダカーポ』を選んだのは、自分が愛読していたというのもあるが、それを言ったら『ブルータス』もまあまあ愛読していた。あえて『ダカーポ』にしたのは、『ポパイ』や『ブルータス』を選ぶヤツは大勢いても『ダカーポ』を選ぶヤツはあんまりいないだろうという逆張り的計算もあったと思う。
何を書いたか具体的内容は覚えていないが、雑誌を表紙から順にめくっていく体で、「『和英ポルノ小辞典』か。小鷹光信ってのはスケベだね」なんて軽口も挟みつつ感想を述べるような口語スタイルで書いた気がする。無難な感想文を書いてもつまらないし、とりあえず目立とうとしたのだろう。
ふざけてると思われたのか、最初の面接で「この作文が評価の対象になると知ってましたか」と聞かれたが、「はい」と言うしかない。落ちたかなと思ったものの、首尾よく二次面接に進み、それも通った。しかし、最終的にはあえなく不採用。受験した出版社の中では最も初任給が高かったので残念だったが、仕方ない。マガジンハウスとはフリーになってから何度も仕事をすることになるが、それはまた別の話。
社会人になってからも『ダカーポ』は、ちょいちょい読んでいた。が、雑誌の現場で仕事をするようになってからは忙しさもあって手に取る機会は減り、いつしか買わなくなってしまった。その後は書店で見かけることはあってもスルーしたまま、2007年12月20日号(620号)をもって休刊となる。最後の特集は「今年最高!の本」「ヒト・モノ・ブーム・事件の総まとめ」と、同誌の締めくくりにふさわしいものだった。
最盛期に20万部だった部数は7~8万部になっており、「インターネットやフリーペーパーの台頭で読者の情報収集手段が様変わりし、雑誌としての役割を終えた」(朝日新聞2007年10月11日付東京夕刊)というのが休刊の理由。同日の産経新聞の記事では「インターネットや携帯電話の普及で、情報収集の手段が様変わりした。情報誌としての役割を終えた」となっていて微妙に違うが、いずれにせよ納得の理由ではある。むしろ、そんな時期まで頑張っていたことのほうに驚く。
とはいえ、インターネットにインチキ情報があふれる今、一周回ってきちんとスクリーニングされた情報クリッピング雑誌の出番はあるのでは……という気がしなくもない。単なるクリッピングではなく、片っ端からケンカ売る勢いでファクトチェックする雑誌があったら、需要はあるのではないか。まあ、それこそコスパ的に成立しないかもしれないが。
文:新保信長

