作文のお題は『ダカーポ』で【新保信長】 連載「体験的雑誌クロニクル」29冊目
新保信長「体験的雑誌クロニクル」29冊目
初代編集長・甘糟章氏による創刊の辞(編集後記)はこんな感じ。
〈現代ほど情報が氾濫している時代はありません。TV・ラジオ・新聞・雑誌・単行本・PR誌・ミニコミ誌等々……数えあげればきりがありません。(中略)そこで、わたしたちは、自分の感性をたよりに、いくつかのキーになる、点のような断片的情報を結びつけて、「現代」そのもののイメージを創りあげなければならないわけです。/ダカーポは、わずか90ページの中にさまざまな現代的“点情報”をギッシリ詰め込んだリトル・マガジンです。/わたしたち編集部の情報の取捨選択・情報処理が的確ならば、読者は頭の中に、おぼろげにしろ、「現代の感覚的見取り図」のようなものをイメージすることができるはずだ――こんな期待をこめて、編集したつもりです〉
要は、多種多様なメディアの情報をクリッピングする雑誌ということだ。さすがに特集は独自ネタだが、たとえば「ゴシップ」「語録」といったコーナーのネタは、週刊誌の記事からピックアップしたものだし、「グルメ情報」も雑誌や単行本からの抜粋。「マスコミがとりあげた店」の一覧表も掲載する。「ダカーポの選んだ三面記事」は地方紙の面白事件をセレクト。「キャンパス」では各大学の学内新聞やミニコミ誌の記事を紹介する。
悪く言えば人のふんどしで相撲を取ってるようなもので、今でいう「まとめサイト」みたいなものにも思えるが、ネット検索ではなく地方紙やミニコミ誌までを手作業でチェックするのだから、それなりに手間はかかっている。一般週刊誌9誌(朝日、毎日、読売、サンケイ、文春、新潮、現代、ポスト、宝石)、女性・芸能誌5誌(平凡、明星、女性、セブン、女性自身)で扱われたテーマの頻度と総ページ数をランキングで見せる「雑誌の目次頻度」も、作業的にはなかなか面倒くさそうだ。
面倒くさいといえば、第2号(1981年12月5日号)の特集「世紀末的頭脳マラソン 雑誌『完全読破』の記録」もそう。『壮快』『中央公論』『婦人倶楽部』『微笑』『ニュートン』といった雑誌を表紙の法定文字(発行日や第三種郵便物認可日などの記載)からもくじ、記事本文、写真キャプション、広告、裏表紙の「Printed in Japan」まで、すべての文字を読破するというチャレンジ企画だ。挑戦者は、マスコミ系会社員と大学生。各自が読破までの過程と所要時間をリポートする。
雑誌をそこまで精読することは普通ないので、それぞれにいろんな発見があって面白い。だいたい十数時間かけて読破しているなかで、気の毒なのは『ぴあ』をあてがわれた大学生だ。「はみだしYouとPia」のように読んで面白い部分はともかく、各映画館の料金や上映時間、路線図の駅名まで読まなきゃいけないんだから、たまったもんじゃない。結局、46時間42分(10日間)かけて読破したらしいが、この『ぴあ』のコーナーだけ活字が小さいのにグッとくる。どうやって数えたのか知らないが、データとして「約105万語」と記載されており、こういう数字を出すのも同誌の得意技だ。


